1978年にスイス生まれの実業家Donald Hessによってナパで最も冷涼な山地のブドウ栽培地域で古代の海底と火山性土壌が混在する深くて岩の多い土壌のマウントヴィーダーに設立されたThe Hess Collectionザ・ヘス・コレクションの歴史と栄光の軌跡をご紹介します。
ザ・ヘス・コレクションについて
The Hess Collectionザ・ヘス・コレクションは1978年にスイス生まれの実業家
Donald Hessと妻Ursulaによってナパから車ですぐのマヤカマス山脈南部マウントヴィーダーAVAにブドウ畑用の土地を購入した事から始まります。Hess家は1844年からスイスのBernにビール醸造所を所有しており、父親はモロッコのTangiersで65室を有するホテルを経営していました。
そんな家庭で育ったDonald Hessは24歳の時に数人のパートナーと共にスイスのValsでミネラルウォーターの源泉を買いValser Wasser 社を設立。スイス最大のミネラルウォーター企業にまで成長させました。※2002年にValser Wasserをコカ・コーラ社に売却。
一方でDonald Hessは父が始めたホテル事業に積極的に取り組み、父から受け継いだホテルを通じモロッコでの事業を大幅に拡大。一時は1,100室を運営し1,000人以上の従業員を雇用していました。1978年になるとこの事業を売却しWilliam Hill Estate WineryのWilliam HillからマウントヴィーダーAVAの土地を購入。標高約2,000フィートの丘陵地にThe Hess Collectionザ・ヘス・コレクションを設立しました。初代ワインメーカーは
Randle Johnsonです。Randle Johnsonは1974年にカリフォルニア大学デービス校でブドウ栽培の修士号を取得し、ラザフォードのSouverain Wineryで経験を積みます。
1977年にはMayacamas Vineyardsのヴィンヤード・マネージャー兼セラー・マスターに就任。その後スタッグス・リープ・ワイナリーのワインメーカーを務め、1983年にザ・ヘス・コレクションの初代ワインメーカーに就任しました。
1986年になるとクリスチャン・ブラザーズから
1903年に建てられた古い石造りのワイナリーの建物をリース契約で借り受けます。また、ワインとアートという2つの情熱を結びつけプライベートアートコレクションを共有する手段としてワイナリー内にアートギャラリーを設立しました。
これらのワイナリー施設は1989年6月に一般公開され、テイスティングルームも完備されています。
進化するザ・ヘス・コレクション
1995年になるとサンパブロ湾から16km圏内に位置し、朝の霧と午後のそよ風の影響から冷涼な気候となる理想的な155エーカーの場所にシャルドネを植え始めます。この畑は先住民の名前に因んでSu’skol Vineyardと名付けられました。
1999年には2代目ワインメーカーとしてDave Guffyを迎え入れます。
Dave Guffyはレストランで働いていた時にさまざまなワインを試飲する機会があり、ワインに興味を持ち始めます。その後、フレズノ州立大学で醸造学とブドウ栽培学を学びました。Dave Guffyの信念は力強さとエレガンスを兼ね備えた果実味が前面に出たカリフォルニアスタイルのワインを造る事というものでした。
2008年にはザ・ヘス・コレクションがNapa Green Certificationの認定を受けた数少ないワイナリーの1つとなります。Napa Green Certificationは環境に配慮した資源、エネルギーの節約を目的とした厳しい基準を設けており、それらの基準を満たしたワイナリーに付与される称号です。
2011年になるとザ・ヘス・コレクションはロシアン・リバー・バレーのピノノワール専門生産者MacPhail Family Winesを買収します。
ザ・ヘス・コレクションの勢いは止まりません。
ザ・ヘス・コレクションが所有・管理する畑
ザ・ヘス・コレクションはナパバレーに5つのブドウ畑を所有しており、モントレー・カウンティと隣接するソノマ・カウンティにもブドウ畑を所有しています。以下にその詳細をご紹介します。
Veeder Summit Vineyard
サンフランシスコ湾の涼しい海洋の影響で日中の気温は谷底よりも平均5~10度低くなり、夜は涼しい空気が低い標高に沈むため、わずかに暖かくなります。標高は非常に高く1,300~2,000フィート。土壌は火山性。
Veeder Hills Vineyard
標高600~1,120フィートにあるこの畑は谷底よりも冷涼で極端な気温の影響を受けにくい場所です。カベルネ・ソーヴィニョンとマルベックが植えられており土壌は粘土質。
Su'skol Vineyard
サンパブロ湾とサンフランシスコ湾に近いという事から魚を大切にしていた先住民Su’skolに因んで名付けられました。海からの冷涼な風の影響を受けシャルドネの栽培に理想的な気候を作り出しています。土壌は砂質の粘土質土壌。
Allomi Vineyard
ナパ郡Pope Valleyの標高770~950フィート、ハウエルマウンテン東麓に位置するこの場所は長く暖かい生育期間と水はけの良い粘土質と岩石土壌の組み合わせが最高の成熟条件を生み出しています。
Shirtail Creek Vineyard
モントレー郡の内陸部、海岸沿いの谷に位置し、冷涼な霧と海洋性の影響でシャルドネの栽培に最適な場所となっています。標高は239フィート程度で土壌は砂や粘土。シャルドネのみが栽培されています。
主なリリースワイン
ザ・ヘス・コレクションではカベルネ・ソーヴィニョンの他にAlbarino、Chardonnay、Charbono、Gruner Veltliner、Late Harvest Chardonnay、Malbec、Merlot、Orange Muscat、Petite Sirah、Petite Sirah Rose、Pinot Gris、Pinot Noir、Sauvignon Blanc、Syrah、Zinfandelと実に多種多様な品種を取り扱っています。ここでは、フラッグシップのカベルネ・ソーヴィニョン及びカベルネブレンドから主なリリースワインをご紹介します。
Mount Veeder Cabernet Sauvignon
Veeder Hills Vineyardで栽培されたカベルネ・ソーヴィニョンで造られるこのワインはさまざまな土壌、太陽の向き、標高で栽培された自社畑の最高のブロックから厳選されたブドウを供給源としています。
Napa Valley Allomi Cabernet Sauvignon
ナパバレー北東部のなだらかな丘陵地帯に210エーカーのAllomiで栽培されたカベルネ・ソーヴィニョンで造られるこのワインは長く暖かい成長期と水はけの良い土壌が組み合わさって、カベルネソーヴィニヨンに最適な熟成条件が生まれます。
Mount Veeder 19 Block Mountain Cuvee
標高1,300~2,000フィートのVeeder Summit Vineyardの中からワインメーカーが特別にセレクトしたブドウで造られるこのワインはカベルネ・ソーヴィニョンとマルベックが主体となります。急な斜面と火山性土壌に粘土を混ぜた土壌が独特の風味を生み出します。
The Lion Cabernet Sauvignon
ザ・ヘス・コレクションが所有する畑で収穫されたブドウのうち、最高のヴィンテージのみ生産される究極のワインです。「ライオンの心と勇気を持って毎日生きる」というヘス家の信条が名前に反映されています。
Lion Tamer
このワインは力強いタンニンをなだめるためにマルベックを使用しています。この事から力強く本能的なライオンをなだめる事に例えられてLion Tamerの名が付けられました。このシリーズにはCabernet SauvignonとRed Blend及びWhite Blendがあります。
近年のザ・ヘス・コレクション
2014年8月24日の早朝、ナパの南部でマグニチュード6.1の大地震が発生した事で多くのワイナリーが被害に遭いました。ザ・ヘス・コレクションも被害に遭ったワイナリーの1つでした。
2つの10,000ガロンのタンクが破裂し、2013年ヴィンテージのカベルネソーヴィニヨン15,000ケース相当が周囲の牧草地と中庭に漏れ、草が紫色に染まりました。樽や瓶詰めのワインのケースも大きな被害を受けました。
この甚大な被害を受けてザ・ヘス・コレクションでは数年の歳月を経て2018年に新しいセラー施設をリニューアルオープンさせました。
ザ・ヘス・コレクション創業者のDonald Hessは2017年に経営から身を引き、現在は娘のSabrinaと夫のTim Perssonがザ・ヘス・コレクションの日々の運営を監督しています。
ワインテイスティングレポート
Hess Collection Cabernet Sauvignon 1983
2021年1月9日
大変希少なザ・ヘス・コレクションのファーストヴィンテージです。
ブラックベリーのような黒系果実と杉や針葉樹のような植物的な強い香りが取れる。また、スミレやバラの花びらのようなニュアンスも取れる。味わいは甘みがさほど強くなくソフト。
酸味はこのヴィンテージでも強く残っており、タンニンは熟成している事もあり弱めだが収斂性は感じられる。1点、カベルネ・ソーヴィニョン特有のアタックの強さ、凝縮感が非常に弱く到底評価できるものではないと判断。ある意味初めての経験で勉強になりました。
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