Martinelli Winery

マルティネリ・ワイナリー(Martinelli Winery)

1880年代から続くロシアン・リバー・バレーの伝統的な家族経営ワイナリーMartinelli Wineryマルティネリ・ワイナリーが歩んだ歴史と功績をご紹介します。貴重なバックヴィンテージのテイスティング・レポートもあわせてお届けします。

マルティネリ・ワイナリーについて

Guiseppe and Luisa Martinelli

Guiseppe and Luisa Martinelli
参照元:martinelliwinery.com

1880年代に19歳のGuiseppeと16歳のLuisa Martinelliはイタリア・トスカーナ地方からソノマ郡のロシアン・リバー・バレーへワイン用ブドウ栽培の土地を求めて移住しました。※当時GuiseppeとLuisaは周囲から結婚を反対されて駆け落ちしたという説もあります。

Guiseppeはイタリアでワイン生産者であった為、カリフォルニアのフォレストヴィルで2年間ワイン生産者として従事した後、1887年に土地を購入して60度の急勾配の斜面にジンファンデルとマスカット・オブ・アレキサンドリアを植えました。このような急勾配のブドウ畑を耕す奴はよっぽどのマヌケ(Jackass)以外いないという事でJackass Vineyardと名付けられました。

Leno Martinelli

Leno Martinelli
参照元:martinelliwinery.com

1918年に55歳という若さでGuiseppeが亡くなると上の3人の兄弟は家業に全く興味を示さなかった為、当時12歳の末っ子Leno Martinelliがこの土地(Jackass HillとJackass Vineyard)の手綱を取る事になりました。

Leno Martinelliは中学2年生になると学校を辞めフルタイムで家業に従事しました。その後、1973年にLeno Martinelliは長男のLee Martinelli Srにリンゴ、プルーン、ブドウの栽培方法とワインの醸造方法を教え、手綱を引き継ぎます。
※Leno Martinelliは89歳になるまでの77年間家業に携わりました。

Lee Martinelli Sr

Lee Martinelli Sr
参照元:martinelliwinery.com

1973年になるとLee Martinelli Srはロシアン・リバー・バレーにある叔父のTony Bondiが運営するリンゴ園を引き継ぎます。このリンゴ園はZio Tony Ranchと名付けられ1980年代にシャルドネ、1990年にピノノワールを植えました。

そして、Lee Martinelli Srと妻Carolynはマルティネリ独自のワイナリーを保有する事を決め、このZio Tony Ranchにワイン醸造施設とテイスティングルームを建設しました。

martinelli winery

martinelli winery
参照元:martinelliwinery.com , theprimlanikitchen.com

1980年代にマルティネリ・ワイナリーの2番目の畑であるCharles Ranchが追加されます。この土地はFort Ross-Seaviewに位置し、Lee Martinelli Srの妻Carolynの父であるGeorge H.Charlesが運営する羊牧場で、George H.Charlesが17エーカーの牧草地にシャルドネを植え、Charles Ranchと名付けられました。

ヘレン・ターリーの参画でステップアップするマルティネリ・ワイナリー

Helen Turley

Helen Turley
参照元:martinelliwinery.com

1991年のある時、マルティネリが保有した2番目の土地Charles Ranchの隣にブドウを植える女性がいました。Lee Martinelli Srはお隣さんであるこの女性と度々、カジュアルな会話をするようになりました。

この女性こそが後に全米トップクラスのコンサルティングワインメーカーにまで登り詰めた「Wine Goddess(ワインの女神)」Helen Turleyヘレン・ターリーだったのです。そして、Helen Turleyヘレン・ターリーがブドウを植えていた畑はロバート・パーカー氏に「 畏敬の念を抱かせる 」と言わしめたマーカッシン・ヴィンヤードでした。

Bryan Kvamme

Bryan Kvamme
参照元:martinelliwinery.com

1992年になるとHelen Turleyヘレン・ターリーはマルティネリ・ワイナリーのコンサルティングワインメーカーに就任します。これを機にマルティネリ・ワイナリーではHelen Turleyヘレン・ターリーの指導で新しいブドウの栽培方法とセラーでの慣行を進めていきます。1997年にはHelen Turleyヘレン・ターリーの右腕としてBryan Kvammeがアシスタントワインメーカーに就任します。

Bryan Kvammeはカリフォルニア大学デイビス校を卒業後、Napa Wine Company、Gloria Ferrer、Benessere wineriesで経験を積んだ人物です。

こうしてHelen Turleyヘレン・ターリー率いる新マルティネリ体制が組まれ、マルティネリ・ワイナリーのワインはカリフォルニアのトップクラスへと駆け上がっていきます。

それぞれの世代交代

2008年になるとコンサルティングワインメーカーHelen Turleyヘレン・ターリーの助手を務めていたBryan Kvammeがワインメーカーに就任します。そして、2010年にHelen Turleyヘレン・ターリーがマルティネリ・ワイナリーでの契約を満了します。2011年にはワイン醸造コンサルタントにErin Greenを迎え入れました。

Erin Greenはカリフォルニア大学デイビス校を卒業後、Sonoma-Cutrer Vineyardsでパートタイムからスタートし、その後Napa Wine Companyの立ち上げに貢献しました。Bryan KvammeとはこのNapa Wine Companyで出会いました。Erin GreenはHelen Turleyヘレン・ターリーのプロジェクトのアシスタントとしても従事していました。

David W. Hejl

David W. Hejl
参照元:winebusiness.com

そして2015年2月、Lee Martinelli Srが42年間務めたCEOとしての職を退きます。後任にはCEO兼ゼネラルマネージャーとしてDavid W. Hejlを迎え入れます。

David W. HejlはKosta Browne WineryのCEO兼ゼネラルマネージャーを務めており、Nabisco、Berkshire Hathaway、Gourmet Award Foods、Ruiz Food Products等食品および消費者製品業界で役員を含む30年以上の経験を持つ人物です。Lee Martinelli Srは取締役会長として引き続き残ります。

Courtney Wagoner

Courtney Wagoner
参照元:martinelliwinery.com

更に2017年にはCourtney WagonerがBryan Kvammeの後任としてマルティネリ・ワイナリーのワインメーカーに就任します。

Courtney Wagonerはカリフォルニア州立工科大学で食品科学を専攻し、発酵とワイン製造の科学を研究していました。その後、Artesa Wineryでインターンシップとして携わり、Wild Horse Wineryの研究室とセラーでの職務に従事しました。その他Gundlach Bundshau Winery、Alderbrook Wineryでも経験を積みます。

2015年にマルティネリ・ワイナリーのアシスタントワインメーカーに就任し、2017年にワインメーカーとして指揮を執るようになります。Courtney Wagonerは冷涼地域でのブドウ醸造に関する専門知識により、ピノノワールとシャルドネに情熱を傾け、マルティネリ・ワイナリーの幅を広げていきました。

このように2008年からの約10年間はマルティネリ・ワイナリーにとってそれぞれの世代交代を迎えるフェーズとなりました。

マルティネリ・ワイナリーが保有する畑

現在、マルティネリ・ワイナリーではソノマ郡に16の畑を保有しています。取り扱う品種はジンファンデル、シャルドネ、ピノノワール、シラー、マスカット・オブ・アレキサンドリアの5種類で、ジンファンデルに関しては1880年代に植えられた先祖代々受け継がれた畑で栽培されます。また、この畑(ジャッカスヒル)の一画にマスカット・オブ・アレキサンドリアが栽培されています。

以下に各畑の詳細をご紹介します。

Fort Ross-Seaview Wine Region

Blue Slide Ridge
1994年に取得したこの土地はFort Ross-Seaviewに位置し、主にピノノワールが植えられています。かのHelen Turleyヘレン・ターリーが運営するマーカッシン・ヴィンヤードと隣接しており、Helen Turleyがピノノワールのグランクリュ畑と絶賛した場所です。
Wild Thyme Vineyard
2009年に取得したこの土地はFort Ross-Seaviewに位置し、主にピノノワールが植えられています。Blue Slide RidgeとThree Sisters Vineyardの間にあるこの畑は野生のタイムが生息していた為この名前が付けられました。
Charles Ranch
1860年に取得したこの土地はFort Ross-Seaviewに位置し、主にシャルドネが植えられています。この畑はLee Martinelli Srの妻Carolynの父であるGeorge H.Charlesによって植えられたマルティネリ・ワイナリー2番目の畑です。
Three Sisters Vineyard
1860年に取得したこの土地はFort Ross-Seaviewに位置し、主にピノノワールとシャルドネが植えられています。この畑はGeorge H.Charlesの3人の娘(姉妹)に因んで名付けられました。

Russian River Valley Wine Region

Jackass Hill
1880年に取得したこの土地はRussian River Valleyに位置し、主にジンファンデル、ミュスカが植えられています。この畑は最大60~65度の傾斜があるアメリカで最も急勾配の畑であると言われています。
Jackass Vineyard
1880年に取得したこの土地はRussian River Valleyに位置し、主にZinfandelが植えられています。この畑はJackass Hillよりも古く、Giuseppi Martinelliがイタリアから移住してきて最初に取得した土地です。
Giuseppe & Luisa
1961年に取得したこの土地はRussian River Valleyに位置し、主にZinfandelが植えられています。この畑は先代Giuseppi and Luisa Martinelliがイタリアから移住し、新世界に来て夢を追いかけた彼らの決意に敬意を表して名付けられました。
Zio Tony Ranch
1959年に取得したこの土地はRussian River Valleyに位置し、主にピノノワール、シャルドネ、シラーが植えられています。この畑はLee Martinelli Srの叔父Tony Bondiが運営していたリンゴ園であった事からその名が付けられました。
Moonshine Ranch
1994年に取得したこの土地はRussian River Valleyに位置し、主にピノノワールが植えられています。この畑は約100年前の禁酒法時代に月が輝く真夜中に納屋でプルーンブランデーのレシピを見ていた事が名前の由来となっています。
Lolita Ranch
2000年に取得したこの土地はRussian River Valleyに位置し、主にピノノワール、シャルドネ、シラー、ジンファンデルが植えられています。この畑は元々、牛を飼育していたBob and Lolitaが所有していた事に因んで名付けられました。
Vellutini Ranch
1999年に取得したこの土地はRussian River Valleyに位置し、主にシラー、ジンファンデルが植えられています。この畑はJackass VineyardとJackass Hillの裏側に隣接しており、この土地に住んでいたVellutini家に因んで名付けられました。
Chico's Hill
この畑はマルティネリのエステートの中で最も小さく、3エーカー程度の広さです。東向きの日当たりの良い丘は約45度の急斜面で、1エーカーあたりわずか1.5トンのブドウしか収穫しないように制限しています。
Hop Barn Hill
1961年に取得したこの土地はRussian River Valleyに位置し、主にシラーが植えられています。この畑は1950年代にLee Martinelli Srの叔父Tony Bondiが購入した土地で、後にホップ乾燥所をワイナリーに、ホップの納屋をテイスティングルームに改装しました。
Martinelli Road
1880年に取得したこの土地はRussian River Valleyに位置し、主にシャルドネが植えられています。この畑はJackass Vineyardの麓辺りに植えられた畑で1895年からマルティネリ家が住んでいる土地である為Martinelli Roadの名が付けられています。
Woolsey Road
1998年に取得したこの土地はRussian River Valleyに位置し、主にシャルドネが植えられています。この畑はBaldacci Family Vineyardsの敷地内にあり、美しくなだらかな丘が連なり、北側には遠くに噴火する間欠泉の素晴らしい眺めを提供しています。

Green Valley of Russian River Valley Wine Region

Bondi Home Ranch
1880年に取得したこの土地はGreen Valley of Russian River Valleyに位置し、主にピノノワールとシャルドネが植えられています。Lee Martinelli Srの叔父であるTony Bondiが運営するリンゴ園だった土地です。

近年のマルティネリ・ワイナリー

マルティネリ・ワイナリーではソノマ郡に16のブドウ畑を所有し、合計450エーカー以上の栽培面積を保有しており、これらの畑から100%エステートのブドウでワインが造られています。

現在、Lee Martinelli Srは2人の息子Lee Jr.とGeorgeと一緒にブドウ栽培に関与し続けています。娘のReginaとJuliannaは引き続きワイナリーでリーダーシップを維持しています。

The Martinelli family

The Martinelli family Julie、Lee Jr.、Lee Sr.、Carolyn、Regina、George
参照元:sfgate.com

テイスティング・レポート

Pinot Noir Bondi Home Ranch vs Zio Tony Ranch vs Bella Vigna vs Three Sisters Vineyard
2020年8月5日

Martinelli Pinot Noir

Martinelli Pinot Noir Bondi Home Ranch 2001

香りは干しプラムや乾燥イチジクのニュアンスがあり赤スグリやスモーキーなニュアンスも取れる。味わいは甘みはまろやかで酸味は比較的シッカリとしている。タンニンは緻密。強めの酸味が特徴的でした。

Martinelli Pinot Noir Zio Tony Ranch 2003

香りは濃縮したイチゴジャムやチェリージャムの甘いニュアンスがありバラの香りが若干取れる。味わいは甘みは豊かで酸味はやさしい。タンニンは比較的シッカリとしている。強烈な甘みが特徴的でした。

Martinelli Pinot Noir Bella Vigna 2002

香りはイチゴやチェリーのような赤系果実のニュアンスがあり赤スグリのニュアンスも取れる。味わいは甘みは豊かで酸味は爽やか。タンニンは緻密。強めの甘みと後味の酸味が共存する独特なバランスが特徴的でした。

Martinelli Pinot Noir Three Sisters Vineyard 2003

香りはイチゴやラズベリーの赤系果実のニュアンスがありややスモーキー。味わいは甘みはソフトで酸味は爽やか。タンニンは緻密。甘さ控えめで強い酸味が特徴的。

当編集部ではマルティネリ・ピノノワール4種の中では甘さ控えめで酸味がシッカリと残るMartinelli Pinot Noir Three Sisters Vineyard 2003が高評価でした。また、Martinelli Pinot Noir Zio Tony Ranch 2003とMartinelli Pinot Noir Bella Vigna 2002は甘みが非常に強い印象を受けました。

Chardonnay Zio Tony Ranch vs Muscat Alexandria Jackass Hill
2020年8月5日

Martinelli Chardonnay Zio Tony Ranch 2008 , Martinelli Muscat Alexandria Jackass Hill 2005

Martinelli Chardonnay Zio Tony Ranch 2008

香りは熟したパイナップルや蜂蜜、トーストのニュアンスが強い。味わいは甘みはまろやかで酸味はやさしい。苦味は比較的シッカリとしている。

Martinelli Muscat Alexandria Jackass Hill 2005

香りは熟したライチやマンゴーのニュアンスが強く、バラの香りも取れる。味わいは甘みは豊かで酸味はやさしい。苦味は穏やか。

Syrah Terra Felice vs Zinfandel Jackass Hill
2020年8月5日

Martinelli Syrah Terra Felice 2003 , Martinelli Zinfandel Jackass Hill 2000

Martinelli Syrah Terra Felice 2003

香りは熟したブラックチェリーの中に強いスミレのニュアンスが取れる。味わいは甘みはまろやかで酸味はなめらか。タンニンは緻密。ニューワールド・シラー特有の強いスミレの香りが特徴的でした。

Martinelli Zinfandel Jackass Hill 2000

香りは熟したブラックチェリーや干しプラムのニュアンスがあり黒スグリの香りとスモーキーなニュアンスが取れる。味わいは甘みは豊かで酸味はやさしい。タンニンは熟成から溶け込んでいる印象。強めの甘みが特徴的でした。

カリフォルニアワインについて

ABOUTこの記事の監修者

日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート
カリフォルニアワイン協会認定資格 California Wine Certification Program Level 2

2011年よりカリフォルニアワインのバックヴィンテージを追求。 ナパバレー、ソノマに足を運び数多くの名門ワイナリーを訪問。 主に海外のワインオークションで希少なバックヴィンテージを調達。

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