Merry Edwards

メリー・エドワーズ(Merry Edwards)

セラーで女性が主導権を握る道を切り拓き、ソノマの地でカリフォルニアピノノワールのパイオニアとして活躍するMerry Edwards(1997年設立)の栄光の軌跡をご紹介します。希少なバックヴィンテージのテイスティング・レポートもあわせてお届けします。

メリー・エドワーズについて

Merry Edwards

Merry Edwards
参照元:merryedwards.com

1971年にカリフォルニア大学バークレー校で栄養学を学んでいたMerry Edwardsは、カリフォルニア大学デイビス校でワイン醸造学を学んでいたAndrew Quadyと出会い、ワイン醸造を学問として学べる事を知って驚きました。
※Andrew Quadyは後にQuady Wineryを設立します。

Merry Edwardsはすぐにカリフォルニア大学デイビス校でワイン醸造学を学び始めました。1974年にサンタ・クルーズ・マウンテンAVAにあるMount Eden Vineyardsでワインメーカーに就任。1977年にはMatanzas Creekの創設ワインメーカーとなりました。

1984年になるとMerry Edwardsはコンサルティング事業に専念する為、Matanzas Creekを離れます。

同年1984年に家族と共にロシアン・リバー・バレーにシャルドネに特化したThe Merry Vintnersを設立します。しかしながら、1989年には生産がストップし破産してしまいます。その後、1991年までソノマのLaurier Wineryで副社長兼ワインメーカーを務めます。Merry Edwardsはこの頃にはコンサルティングビジネスでの実績も積み上がり、評判も上々でした。

Ken Coopersmith

Ken Coopersmith
参照元:merryedwards.com

1996年になるとセバストポル地域にワイン造りに最適なリンゴ園を発見し、購入します。そして翌年1997年にMerry Edwards Wineryを設立しました。この自社畑は自身の名前からMeredith Estate Vineyardと名付けられました。
※MeredithはMerryの別称

主なブドウの調達先はLaguna RoadにあるKlopp RanchとRobert PellegriniのOlivet Lane Vineyardでした。1999年にはメリー・エドワーズ2番目のエステートとなるロシアン・リバー・バレーのリンゴ園を購入します。このリンゴ園をピノノワールに植え替え、夫の名前Ken CoopersmithからCoopersmith Vineyardと名付けました。

優良な畑と提携を拡大するメリー・エドワーズ

1999年にLee Martinelli Jr.からリースされたWindsor Gardensがラインナップに追加されました。
2002年にはメリー・エドワーズ初のソーヴィニヨン・ブランをリリースします。メリーはワインメーカーのディナーに注ぐ白ワインを用意する為に、メリーエドワーズラベルの下でソーヴィニヨン・ブランを造り始めました。

彼女のソーヴィニヨン・ブランは数年にわたってMatanzas Creekでのワインメーカー時代に磨かれ、後にピノノワールとソーヴィニヨン・ブランの両方を生産する数少ないカリフォルニアワイン生産者の1人となります。また、当初はSebastopolの西にあるCohen Vineyardからブドウを調達していました。

2006年になるとGeorganne Vineyardと長期リース契約を結びます。この畑は丁度シャルドネをピノノワールに植え替える事を検討していたGeorganneとBob Proctorが所有しており、その相談に乗ったメリー・エドワーズが畑のポテンシャルに気付き契約に至りました。この契約によりメリー・エドワーズにまた1つピノノワールのラインナップが追加されます。

2009年にはNancy and Louie Sanchiettiが所有するWarren’s Hillの畑と長期リース契約を結びます。この畑は元々、Warren Duttonが植えた畑で、20年以上もの間さまざまなワイナリーラベルの下で優れたピノノワールを生産してきました。

しかしながら、畑の深刻な衰退により植え替えが必要な状況になった為、1999年に契約したWindsor Gardensから苗木を持ち込み植えました。そしてこの息を吹き返した畑には2006年に亡くなったメリーの息子Warrenへ敬意を表してWarren’s Hillと名付けられました。

また、同年2009年にFlax Vineyardと長期リース契約を結びます。この畑は2004年にPhil and Toby Flaxから少量のブドウを購入してピノノワールを造っており、その並外れた可能性を感じていたメリー・エドワーズはFlax Vineyardからのブドウ供給が拡大されたタイミングで長期リース契約を結びました。

このようにメリー・エドワーズでは自社畑以外にも優良な畑と提携し、自社のラインナップを拡充していきました。

次のステージへ進むメリー・エドワーズのワインビジネス

2008年には念願の自社ワイナリー施設を完成させます。

1999年に取得したCoopersmith Vineyardの敷地に建設されたワイナリーはテイスティングルームを完備し、一般公開されています。※2010年にソーヴィニヨン・ブランのバレル発酵プログラムに対応する為、設備が拡充されました。

Merry Edwards Winery , Merry Edwards Winery Entrance , Merry Edwards Winery Tasting Room

上:Merry Edwards Winery 左:Merry Edwards Winery Entrance 右:Merry Edwards Winery Tasting Room
参照元:merryedwards.com , uncorkedwinetravels.com

Merry Edwards Guesthouse

Merry Edwards Guesthouse
参照元:merryedwards.com

2013年になるとSebastopolの海に面した丘に23エーカーの土地を購入しRichaven Vineyardと名付けました。

この場所は午後に発生する冷たい霧と沿岸からのそよ風の恩恵を受け高品質なピノノワールを造る事が可能と判断し、10エーカーのピノノワールが植えられました。また、メリー・エドワーズではForestvilleにも土地を購入し、Maefield Vineyardと名付けました。この土地にはソーヴィニヨン・ブランが植えられるとともに敷地内にはゲストハウスが建設されました。

Heidi von der Mehden

Heidi von der Mehden
参照元:merryedwards.com

2018年10月メリー・エドワーズでは準ワインメーカーHeidi von der Mehden(2015年入社)をワインメーカーに昇格させました。Heidi von der Mehdenは1997年にサンタクララ大学で化学の学位を取得しました。

同じ年にメリー・エドワーズ・ワイナリーが設立されました。Heidi von der MehdenはArrowood Wineryのワインメーカー、Mauritson Winesのアシスタントワインメーカー、Kenwood Vineyardsでの研究員の経験等、合計18年間ワイン業界で経験を積んだ人物です。

メリー・エドワーズ・ワイナリーは自社ワイナリーを完成させ、自社畑を追加し、新たなワインメーカーを立てる事で確実にネクストステージへと駆け上がります。

リリースされている主なワイン

Russian River Valley Sauvignon Blanc
Russian River Valley Sauvignon Blanc1977年にワインメーカーとして従事していたMatanzas Creekでの経験を活かし、Cohen Vineyard、Hopkins Ranch、Dutton-Jewell Ranch等の畑からの買いブドウで造られます。

また、自社畑Meredith Estateから少量のソーヴィニヨン・ブランで造られるLate Harvest Sauvignon Blancもリリースされています。

Russian River Valley Pinot Noir
Russian River Valley Pinot Noirロシアン・リバー・バレーの3つの優良な畑「Dutton FamilyのJewell Vineyard」「Ted KloppのKlopp’s Ranch」「Pellegrini FamilyのOlivet Lane」をブレンドして造られるこのピノノワールは創業当社から続くワインの1つです。
Coopersmith Pinot Noir
Coopersmith Pinot Noir1999年に取得したロシアン・リバー・バレーの土地にあるこの畑は、Laguna Ridgeのなだらかな起伏のある斜面に位置し、メリー・エドワーズの夫Ken Coopersmithにちなんで名付けられました。
Flax Vineyard Pinot Noir
Flax Vineyard Pinot Noirこの畑はウエストサイドロード沿いの丘の中腹に位置するToby and Phil Flaxが所有する畑で、ウィリアムズ・セリエムにもブドウを提供していました。2004年に開始した小規模な取引が2009年時点では長期リース契約にまで発展しています。
Klopp Ranch Pinot Noir
Klopp Ranch Pinot Noirこの畑はLaguna Ridgeの東斜面に位置し、Ted Kloppが所有する畑です。メリー・エドワーズ創業当初から密接な協力関係にあります。
Olivet Lane Pinot Noir
Olivet Lane Pinot NoirSanta Rosa Plainの西部に位置し、Pellegrini Familyが所有するこの畑はソノマカウンティ最高品質と考えられ、多くのワイン生産者に切望されるブドウを生産しています。メリー・エドワーズ創業当社から生産を続けるワインの1つです。
Meredith Estate Pinot Noir
Meredith Estate Pinot Noirメリー・エドワーズが1996年にSebastopolで初めて購入した土地で、自身の名前にちなんで名付けられた自社畑です。霧で覆われたこの土地特有の冷涼な気候が高品質なブドウを造りだします。
Georganne Pinot Noir
Georganne Pinot NoirGeorganneとBob Proctorが所有するこの畑は、古いシャルドネが植えられており、ピノノワールへ植え替える相談をメリー・エドワーズにしていた事がきっかけで取引が始まります。たまたまメリー・エドワーズ夫妻のミドルネームGeorgeとAnnを組み合わせたネーミングに運命を感じたと言われています。
Angel Wing
Angel Wingこれは2006年にこの世を去ったメリー・エドワーズの息子Warren Millerを称えて造られました。Meredith Estateのバレルの中から特別な10個を選び、ブレンドされる特別な瓶詰めで、2006年と2011年に造られました。
Windsor Gardens
Windsor GardensMartinelli WineryのLee Martinelli Jr.からリースされたロシアン・リバー・バレー北部に位置するWindsor Gardensは30年以上前から存在する古いピノノワールのブドウ畑で、1999年にメリー・エドワーズのラインナップに追加されました。
Warren's Hill
Warren's HillNancyとLouie Sanchiettiが所有するこの畑は元々、Warren Duttonが植えた畑で、植え替えが必要な状況になった為、1999年に契約したWindsor Gardensから苗木を持ち込み、復活させました。

畑には2006年に亡くなったメリーの息子Warrenへ敬意を表してWarren’s Hillと名付けられました。メリー・エドワーズでは2009年に長期リース契約を締結しています。

Bucher Pinot Noir
Bucher Pinot Noirウエストサイドロードにあるこの畑は長年Bucher Familyが所有しており、2016年に2つの区画(North Pyramid、Frost Hill)からブドウを購入し始めました。メリー・エドワーズでは何年もの間この畑に注目しており、ブドウの購入を吟味していました。

メリー・エドワーズの主な受賞歴

2004年にアメリカで発行されている日刊新聞San Francisco Chronicleにてメリー・エドワーズがWinemaker of the Yearに選出。また、Wine&Spirits誌から「世界で最も影響力のある50人のワインメーカー」の1人に選出されました。

Vintners hall of fame 2013

Vintners hall of fame 2013
参照元:starkinsider.com

2013年にはThe Culinary Institute of America(料理の学位を付与するプロフェッショナル・スクール)がメリー・エドワーズをVintners hall of fame(ワイン醸造の殿堂入り)として発表しました。この賞はカリフォルニアワインの品質や認知度にどのような影響を与えてきたかを評価するという内容です。

2016年にワインアドヴォケイト誌のロバート・パーカーはメリー・エドワーズの2013年のピノノワールに対して「カリフォルニアの巨匠であり先駆者の1人が造った並外れたピノノワールである」と評しました。

そして、2019年にはカリフォルニアステートフェアでメリー・エドワーズが生涯功労賞を受賞しました。これはカリフォルニアの産業、農業等を紹介する17日間のイベントで、カリフォルニア州サクラメントのCal Expoで開催されます。

近年のメリー・エドワーズ

Merry Edwards and Louis Roederer

左:Ken Coopersmith 中:Merry Edwards 右:Louis Roederer’s president Frederic Rouzaud
参照元:sfchronicle.com

2019年にメリー・エドワーズはフランスのシャンパンメーカーLouis Roederer Champagneへ売却されます。

この契約にはブランドとその在庫及びSebastopolのワイナリーとテイスティングルーム、6つのブドウ畑が含まれていました。Merry Edwardsと夫Ken Coopersmithは1年間引き継ぎの為ワイナリーに残ります。

この売却の背景にはカリフォルニアワイン業界で多くの創業者が直面する後継者問題があります。Merry Edwardsは子供たちが事業を引き継ぐつもりはない事を知っており、約2年間売却先を探していました。

翌年2020年2月14日メリー・エドワーズは45年のワイン人生に幕を下ろしました。

メリー・エドワーズは女性に与えられるワイン醸造職の道を切り拓き、カリフォルニアピノノワールのパイオニアとして走り続けてきた歴史に残る人物です。

2020年で72歳を迎えるメリー・エドワーズは現在、ビクラムヨガとガーデニングを趣味としながら2人の孫の養育に勤しんでいます。

Merry Edwards

Merry Edwards
参照元:merryedwards.com

テイスティング・レポート

Merry Edwards Pinot Noir Meredith Estate 2006 vs Angel Wing 2006
2020年7月8日

Merry Edwards Pinot Noir Meredith Estate 2006 vs Angel Wing 2006

Meredith Estateは1996年にメリー・エドワーズが最初に購入したSebastopol南西に位置する自社畑です。
香りはイチゴやラズベリーのような赤系果実のニュアンスがり、若干スミレの香りも取れる。ややスモーキーなニュアンスもある。味わいは甘みはソフトで酸味は比較的シッカリしている。タンニンは緻密。全体的に非常にエレガントな印象がある。

Angel WingはMeredith Estateの厳選した10個のバレルから造られる特別な瓶詰めです。
香りはカシスやブラックチェリーの濃縮したニュアンスがあり、若干スパイシーでスモーキー。味わいは甘みはソフトで酸味は比較的シッカリしている。タンニンもシッカリしている。Meredith Estateに比べて全体的に力強い印象だが、酸味がシッカリしているのでエレガントにまとまっている。Angel Wingの方は開いた時の華やかさが別格。

時間の経過と共に実力を発揮してくるAngel Wingが高評価でした。

Merry Edwards Sauvignon Blanc 2017
2020年7月8日

Merry Edwards Sauvignon Blanc 2017

香りは柑橘類や青リンゴのニュアンスがあり、その後にパッションフルーツや香木のニュアンスも取れる。味わいは甘みは強めで酸味は爽やか。苦味は穏やか。全体的に力強く、かつバランスが取れているのでニューワールドのソーヴィニヨン・ブランの中では非常に評価が高いと言えそうです。

メリー・エドワーズの購入はこちら

カリフォルニアワインについて

ABOUTこの記事の監修者

日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート
カリフォルニアワイン協会認定資格 California Wine Certification Program Level 2

2011年よりカリフォルニアワインのバックヴィンテージを追求。 ナパバレー、ソノマに足を運び数多くの名門ワイナリーを訪問。 主に海外のワインオークションで希少なバックヴィンテージを調達。

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