ワイナリー 2020.11.27
林 亨(はやし りょう)
Diamond Creek Vineyards(ダイヤモンド・クリーク・ヴィンヤーズ)
徹底した品質への拘りから1968年以来ワインメーカーは2人、ワイン生産量は小ロットの限定生産を貫く事で注目を集めた1968年にナパバレーのダイヤモンドマウンテンに設立されたダイヤモンド・クリーク・ヴィンヤーズの歴史と功績をご紹介します。貴重なバックヴィンテージのワインテイスティングレポートもあわせてお届けします。
ダイヤモンド・クリーク・ヴィンヤーズについて
Al Brounsteinアル・ブロウンスタイン はフランス・ソルボンヌ大学で芸術を学んだ後、UCLAで偶然フランスワイン鑑賞の授業を受けた時にワインへの関心が芽生えました。その後クパチーノの
Ridge Vineyardsリッジ・ヴィンヤーズ で収穫の手伝いをし、ソノマのSebastiani Vineyardsで営業担当者として従事すると、いつしか自身でナパバレー産のカベルネ・ソーヴィニョンを造りたいという夢を持つようになりました。
Al BrounsteinはルイマティーニのLouis Martiniやハイツセラー のJoe Heitzを始めとするナパバレーの著名なワインメーカーに相談した結果、1968年にナパバレーのマヤカマス山脈北部の人里離れたダイヤモンドマウンテンに80エーカーの土地を購入しダイヤモンド・クリーク・ヴィンヤーズを設立。
名前の由来は敷地内を流れる小川の中でキラキラと輝く水晶を見つけた事から「ダイヤモンド・クリーク」と命名しました。ダイヤモンド・クリーク・ヴィンヤーズとしての最初のリリースは1972年になります。
Al Brounsteinはこの土地に3種類の異なる土壌が存在する事に気付きました。そしてそれぞれの土壌に合わせて畑をVolcanic Hillヴォルカニック・ヒル(8エーカー)、Red Rock Terraceレッド・ロック・テラス(7エーカー)、Gravelly Meadowグレヴリー・メドゥー(6エーカー) とし、それぞれ別々のワインを造りました。
後に4番目の畑
Lake Vineyardレイク・ヴィンヤード(0.75エーカー) を加え4種類の畑になるのですが、このLake Vineyardレイク・ヴィンヤードは冷涼な気候の影響を最も受ける畑になります。
その為、果実が完熟する例外的な年にのみ単一畑のワインとしてリリースしますが、その他の年はGravelly Meadowグレヴリー・メドゥーにブレンドしてリリースします。
創業者が残した偉大な遺産
2006年6月26日、創業者Al Brounsteinは1983年から患っていたパーキンソン病の合併症で亡くなりました。享年86歳。 大量生産をせず品質に拘り抜いたAl Brounsteinは、1972年に最初のワインをリリースした時は僅か65ケースで1982年まで利益が上がりませんでした。
銀行はダイヤモンド・クリーク・ヴィンヤーズの収益を上げさせる為にシャルドネやジンファンデルのような他のブドウ品種をポートフォリオに加えるよう圧力を掛けましたが、Al Brounsteinはカベルネ・ソーヴィニョン(ボルドー品種)1本に固執するビジネスプランを決して変えようとはしませんでした。
この強い拘りこそが世界中の業界人や消費者からの賞賛をもたらし、今日のダイヤモンド・クリーク・ヴィンヤーズの名声を築いたのです。
ダイヤモンド・クリーク・ヴィンヤーズが所有する4つの畑
ダイヤモンド・クリーク・ヴィンヤーズの敷地内の各畑で土壌や微気候が異なる為、ワインにはそれぞれのテロワールを反映した独特の違いが現れます。以下に各畑の詳細をご紹介します。※テロワールが異なる4つの畑の他にプティベルドを植えた1エーカーの畑もあります。
Volcanic Hillヴォルカニック・ヒル
南向きの丘の中腹にある8エーカーの畑で火山灰をベースにした軽い埃を含んだ土壌が特徴です。ダイヤモンド・クリーク・ヴィンヤーズの4つの畑の中で最も日当たりが良く温暖な気候から造られるDiamond Creek Volcanic Hill Cabernet Sauvignonは
タンニンが強くなるという特徴があります。
Red Rock Terraceレッド・ロック・テラス
北向きの標高400フィートから800フィートまである急勾配に位置する7エーカーの畑は土壌に鉄分が多く含まれており赤みを帯びています。Volcanic Hillヴォルカニック・ヒル同様、温暖な気候ですがダイヤモンド・クリーク・ヴィンヤーズの4つの畑の中で
最もエレガントな仕上がりとなります。
Gravelly Meadowグレヴリー・メドゥー
東向きの5エーカーのこの畑はもともと先史時代の川床であった事から小岩や砂利が多く水捌けの良い土壌でブドウは水分を求めて奮闘する為、強くなります。また、Lake Vineyardに次いで2番目に涼しい微気候という条件も相まって
超長期熟成型のワインに仕上がります。
Lake Vineyardレイク・ヴィンヤード
湖に囲まれた3/4エーカーの畑は午後に吹く太平洋の風が影響して4つの畑で最も涼しい場所となります。それゆえブドウが熟すまでに時間が必要ですが格別のワインに仕上がります。ブドウが完熟する例外的な年にのみ生産され、その他の年はGravelly Meadowにブレンドされます。
ファーストヴィンテージは1978年で過去40年の内リリースされたのは14回のみ。
近年のダイヤモンド・クリーク・ヴィンヤーズ
2019年7月31日に創業者Al Brounsteinの妻であるAdelle“Boots”Brounsteinが亡くなりました。享年92歳。
そしてダイヤモンド・クリーク・ヴィンヤーズは翌年2020年になると1776年の設立以来一貫して家族経営を続けるフランスのシャンパーニュ・メゾンLouis Roedererルイ・ロデレールへ売却する事になります。
Al Brounsteinと妻Adelle“Boots”Brounsteinが築き上げてきた1つの歴史が終わります。 Louis Roedererルイ・ロデレール傘下で新体制になったDiamond CreekVineyardsダイヤモンド・クリーク・ヴィンヤーズの新たな歴史が始まろうとしています。
ワインテイスティングレポート
Diamond Creek Volcanic Hill 1994 vs Red Rock Terrace 19942020年11月20日
ダイヤモンド・クリーク・ヴィンヤーズは1990年代と2000年代前半が特に出来が良く高い評価を得ています。今回、当編集部ではまさに90年代ど真ん中のVolcanic HillとRed Rock Terraceの同一ヴィンテージ1994を入手しましたのでレポート致します。
Diamond Creek Volcanic Hill 1994
プラム系の香りの中に黒スグリと若干の杉、針葉樹のニュアンスが取れる。またややスモーキーでもある。味わいは甘みは控えめでソフト。酸味は非常にシッカリとしていてタンニンはこのヴィンテージでも強めで収斂性がある。シッカリとした酸味と強めのタンニンが特徴的でした。
Diamond Creek Red Rock Terrace 1994
プラム系の香りの中に杉、針葉樹、土、タバコのニュアンスが取れる。スモーキーでややスパイシー。味わいは味わいは甘みは控えめでソフト。酸味は非常にシッカリとしていてタンニンはこのヴィンテージでも強めで収斂性がある。Volcanic Hillとの違いは強い酸とエレガントな仕上がりという点。素晴らしい。
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