カリフォルニア・ナパバレーの名声を世界的に高めたRobert Mondaviとフランス・ボルドーの五大シャトーとして君臨するBaron Philippe de Rothschildがタッグを組み、新世界カリフォルニアで旧世界ボルドーのノウハウを表現する事を目的として造りだされたOpus Oneオーパス・ワンの歴史と実績をご紹介します。貴重なバックヴィンテージのテイスティング・レポートもお届けします。
オーパス・ワンについて
![Robert Mondavi and Baron Philippe de Rothschild](https://california-wine.biz/wp-content/uploads/2020/05/Robert-Mondavi-and-Baron-Philippe-de-Rothschild.jpg)
左:Robert Mondavi 右:Baron Philippe de Rothschild
参照元:nytimes.com
1970年にフランス・ボルドー地方で五大シャトーの1つとして著名なChateau Mouton RothschildのオーナーであるBaron Philippe de Rothschildとワイン業界のリーダー的存在であり、ナパバレーRobert Mondavi Wineryの創設者Robert Mondaviは、ハワイ島のマウナケアビーチホテルで休暇を過ごしている時に知り合いました。
やがて親交が深まり、1978年にRobert MondaviがChateau Mouton Rothschildへ訪れた際に2社の合同プロジェクトが決定されました。
そして、フランス・ボルドーの伝統とアメリカ・ナパバレーの革新を組み合わせナパバレーの地で並外れたワインを造る事を目的として1979年にジョイントベンチャーを始動。
1982年に正式にOpus Oneと名付けられるまでワインはNapamedocと呼ばれていました。
![Opus One Label](https://california-wine.biz/wp-content/uploads/2020/05/Opus-One-Label.jpg)
Opusとはラテン語から来ている音楽用語OPERの事で、作曲家の最初の傑作を意味します。
1本のワインを交響曲と捉えるという考えからBaron Philippe de Rothschildが命名しました。ワインのラベルには左を向いているRobert Mondaviと右を向いているBaron Philippe de Rothschildの2人の横顔とサインが描かれています。
当初はRobert Mondaviの息子でRobert Mondavi WineryのワインメーカーでもあるTim MondaviとChateau Mouton RothschildのワインメーカーLucien Sionneauによって指揮されました。
オーパス・ワンは1981年にRobert Mondavi Wineryが所有していたTo Kalon vineyardのQブロックを取得します。1983年にはOakvilleの50エーカーのRiver Parcelを取得し、その後、隣接する49エーカーのBallestra Vineyardも取得しました。
1984年に1979年と1980年のヴィンテージをファーストヴィンテージとして同時リリースしました。
そして、Auction Napa Valley最初の年(1981年)にオーパス・ワンが1ケース24,000ドルで落札されました。
これは1979年ヴィンテージでオーパス・ワンが未だNapamedocと呼ばれていた頃のワインでした。1本2,000ドル相当の値が付いたこのワインは、これまでオークションで販売された中で最も高価なカリフォルニアワインとなった事で一気に注目が集まりました。
オーパス・ワン第2章の幕開け
Philippe de Rothschildがパリの自宅で亡くなりました。享年85歳でした。ワイン業界の一時代を築いたBaron Philippe de Rothschildの死で業界に激震が走ります。
その後、娘のBaroness Philippine de Rothschildが後を継ぎました。この年、オーパス・ワンは1985年のヴィンテージの一部を輸出し、フランス、イギリス、ドイツ、スイスで販売された最初の超プレミアムカリフォルニアワインとなりました。
Baroness Philippine de Rothschildがオーパス・ワンを引き継ぐと翌年1989年にワイナリー建設に着手します。
1991年には70,000平方フィートの土地に新ワイナリーをオープン。古典的なヨーロッパと現代的なカリフォルニアの要素が混ざり合ったモダンな建物が緑に囲まれた丘の上に建てられています。
プライベートテイスティングルームを囲むようにバレルルームが配置されており、豪華な屋上テラスも完備されています。総費用は2,900万ドルを超えると言われ、新ワイナリーでの最初のヴィンテージは1991年で1994年にリリースされました。
![Overture](https://california-wine.biz/wp-content/uploads/2020/05/Overture.jpg)
1993年になるとフランス・ボルドーのセカンドワイン文化を受け継いでオーパス・ワンでもセカンドワイン
Overtureオーバーチュアをリリース。
同じ畑でも、オーパス・ワンに使用されなかったブドウで造られたワインです。
オーバーチュアもオーパス・ワン同様にカベルネ・ソーヴィニョン中心のボルドーブレンドになります。
このオーバーチュアの名前の由来はオーパス・ワン同様、音楽用語から来ており、「序章」を意味します。
このワインは複数のヴィンテージをブレンドする為、ヴィンテージがありません(NV)。
2004年ワインメーカーに
Michael Silacciが就任しました。
Michael SilacciはStag’s Leap Wine CellarsでWarren WiniarskiとBeaulieu VineyardsでAndre Tchelistcheffと共に働いていた経験を持ちます。
以前は、Robert Mondaviのチーフワイン生産者であるTim Mondaviが、Chateau Mouton Rothschildのワイン生産者であるPatrick Leonとオーパス・ワン生産の責任を共有していました。
しかし、Patrick Leonは12月に引退しMichael Silacciへその職を引き継ぎました。Tim Mondaviは、コンサルタントとしてオーパス・ワンに留まります。
創業者Robert Mondaviがオーパス・ワンから離脱 ~それぞれの道へ
2004年にRobert MondaviはConstellation Brandsへワイナリーを13億ドルで売却しました。
Robert Mondavi Wineryは1993年の上場以来、経営が上手くいっていなかった事が原因と言われています。
この売却によってMondavi一家は信頼の欠如から分裂してしまいました。
Constellation Brandsはワイン、スピリッツ、輸入ビール等のアルコール飲料の販売を国際的に手掛ける大企業で、広大な流通ネットワークを保有しています。
代表的なアルコール飲料にCorona Extra、Schrader、SIMI等があります。
経営陣を刷新したオーパス・ワンでは同年2004年に
David PearsonがCEOに就任。
David Pearsonは以前、Robert Mondaviと共同でByron Estateを運営しており、vice presidentを務めていました。
翌年2005年にはConstellation BrandsとBaron Philippe de Rothschildがオーパス・ワンを50/50のジョイントベンチャーとして継続する事で合意します。
Robert MondaviはRobert Mondavi Winery部門の名誉会長として残りました。
3年後の
2008年にRobert Mondaviがカリフォルニア州ヨントヴィルの自宅で亡くなりました。享年94歳でした。
Robert Mondaviは1966年に息子のMichael MondaviとTim Mondaviとともに、カリフォルニアの地でヨーロッパ最高級ワインと競合するワインを生産する事を目指してRobert Mondavi Wineryを設立。
禁酒法後の時代にナパバレーに設立された最初の主要なワイナリーでした。
文化、芸術、医療を支援し、カリフォルニアワイン産業の発展に大きく貢献した「カリフォルニアワインの父」の異名を持つRobert Mondaviの死は、世界中のワイン関係者に悲しみを与えました。
一方、オーパス・ワンは2008年にTo-Kalon VineyardのKブロック、Iブロック、MacDonald Estateを取得し、約100エーカーの拡大に成功。Constellation Brands 傘下で勢いを増します。
リリースワイン一覧
Opus Oneの自社畑には4つの区画があり、カベルネ・ソーヴィニョンを中心にボルドー品種5種(カベルネ・ソーヴィニョン、メルロー、カベルネ・フラン、プチヴェルド、マルベック)を栽培しています。
Opus Oneオーパス・ワン
![Opus Oneオーパス・ワン](https://california-wine.biz/wp-content/uploads/2020/05/Opus-One-2007.jpg)
ファーストヴィンテージは1979年で、1984年に1979年と1980年のワインが同時にリリースされました。1979年ヴィンテージは未だオーパス・ワンの名前が付けられていなかったので、カリフォルニアのNapaとフランス・ボルドーのMedocを合わせてNapamedocと呼ばれていました。
ロバート・パーカー監修ワインアドヴォケイトの採点では2010年、2012年が96点、2013年が97点、2014年が96点、2015年が97点、2016年が98点、2017年が95点となっており、2018年が暫定で95点~98点の評価です。また、赤に関しては2011年と1983年が気候に恵まれずあまり評価できない年になりましたが、その他は基本的に当たり年相当と考えて良さそうです。
また、フランスと異なりヴィンテージによって当たり外れが極めて少ないのもカリフォルニアワインの特徴と考えられます。
Overtureオーバーチュア
![Overtureオーバーチュア](https://california-wine.biz/wp-content/uploads/2020/05/Opus-One-Overture-NV.jpg)
1993年にリリースされたオーパス・ワンのセカンドワイン「オーバーチュア」は、当初、ワイナリーでのみ入手可能でしたが、時間の経過とともに、口コミでワインの評判は世界中に広まり、一般販売する事になりました。
品種はオーパス・ワン同様、カベルネ・ソーヴィニョン主体のボルドーブレンドで、オーパス・ワンに使われなかったブドウを複数のヴィンテージにまたがってブレンドしている為、NV(Non Vintage)となります。
近年のオーパス・ワン
2012年9月にはフランス・ボルドーにオーパス・ワンの販売拠点を開設しました。
その2年後の2014年にはBaroness Philippine de Rothschildが手術の合併症で亡くなります。享年80歳でした。
オーパス・ワンでは引き続きMichael Silacciが醸造の全責任を監督していきます。
今やオーパス・ワンはアメリカ国内でよく売れるだけでなく、ワインの50%近くが他の国に販売される程の人気を博しています。
そして、我が国日本はオーパス・ワンの主要輸入国の1つでもあります。また、Wine-Searcher.COMのデータによるとオーパス・ワンは大変人気があり、アメリカのワインで最も検索されているワインで、世界のワインの中では7番目に多く検索されているワインとの事です。
1979年に米仏の巨匠がタッグを組み、新世界カリフォルニアで旧世界ボルドーのノウハウを駆使して最高峰のボルドーブレンドワインを造りあげるというプロジェクトは今もなお「オーパス・ワン」として創設者のビジョンに忠実に生き続けています。
テイスティング・レポート
Opus One 2013 vs Opus One 1984
2020年4月28日
Opus One 2013
ブラックチェリーやブラックベリーのような濃縮した黒系果実の香りで、杉や針葉樹のニュアンスが若干感じられる。第2アロマで若干カカオのニュアンスが取れる。味わいは甘みがやや強めで、酸味には丸みがあり、苦味はカベルネ・ソーヴィニョン特有の収斂性がある。
Opus One 1984
熟したブラックベリーや干しプラムの香りの後にカベルネ・ソーヴィニョン特有の杉や針葉樹のニュアンスが取れる。スモーキーでスパイシーなニュアンスも取れる。味わいは甘みが非常にソフトで酸味は比較的しっかり残る。苦味に収斂性は無く溶け込んでいる印象。
オーパス・ワン2013年と比べると到底同じワインとは思えない程、大きく特徴が異なる。恐らく何度か変わった醸造スタイルの影響で2013年が熟成しても、1984年のようにはならないのではないかと思う。
36年熟成したオーパス・ワンはまだまだ熟成によって美味くなるポテンシャルを感じました。当編集部ではカリフォルニアのカベルネ・ソーヴィニョンの中でもトップクラスであると評価しました。素晴らしい!
Overture NV
2020年4月29日
Overture NV
ブラックチェリーやブラックベリーのような濃縮した黒系果実の香りで、ほんのりカカオやバニラのニュアンスがある。
味わいは甘みがソフトで、長くは続かないが意外と酸はある。苦味はカベルネ・ソーヴィニョン特有のしっかり感じられるタンニンがあるがどちらかというとシルキー。
2013年のオーパス・ワンと比べるとオーバーチュアの方がエレガントな印象。オーパス・ワンよりもオーバーチュアの方を好む人は少なくないのではないでしょうか?
当編集部では甘みが少なく酸が意外とあるのでオーパス・ワン2013よりもオーバーチュアNVの方が高評価でした。
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