1973年に開催されたフランス vs カリフォルニアワインブラインドテイスティング対決(パリテイスティング、パリスの審判)で五大シャトーを差し置いて堂々の1位に輝いたスタッグス・リープ・ワインセラーズは、1986年の再戦で6位、2006年の再々戦でも2位に輝くほどの実力。
このナパ・ヴァレーはスタッグス・リープ・ディストリクトAVAに本拠地を置くスタッグス・リープ・ワインセラーズの魅力を存分にご紹介します。希少なヴィンテージのテイスティング・レポートもお届けします!
スタッグス・リープ・ワイン・セラーズ(Stag’s Leap Wine Cellars)について
政治理論を研究し、博士号取得に取り組む傍ら、シカゴ大学で自由教育の講義をしていた創業者ウォーレン・ウィニアルスキー(1928年生まれ)はロバート・モンダヴィ・ワイナリー初期のワイン造りを担った人物。
当時ワイン造りに適した土地を探していた頃、既にこのNapa ValleyはStag’s Leap Districtでワイン造りをしていたネイサン・フェイと出会い、彼のワインに大変感銘を受けた事から、1970年にネイサン・フェイのブドウ畑の隣のプルーン農園だった44エーカーの土地を購入し、創業。Stag’s Leap Vineyardsと名付けました。
後にこの畑から造られたS.L.Vという名前のワインが、パリテイスティング赤ワイン部門でシャトー・ムートン、シャトー・オーブリオンを押さえ1位となり歴史を変える事になります。
歴史を変えた伝説のワイナリーStag’s Leap Wine Cellarsのワインとは
スタッグス・リープが目指すワインのスタイルは「ベルベットの手袋をはめた鉄の拳」と表現されています。芸術レベルとも言える様々なバランスに重きを置いており、長期熟成型ワインを目指す事にもつながっています。
また、ナパの元祖カルトワイン「Grace Family Vineyards」のオーナー「ディック・グレース」氏の長男であり、害虫防除の第1人者と囁かれるカーク・グレース氏が栽培責任者として自社畑を管理しています。
自社畑シングルヴィンヤード・シリーズはS.L.VとFAYがあり、火山灰・瓦礫土壌のS.L.Vは「火のワイン」、沖積土壌のFAYは「水のワイン」と例えられ、味わいにもそれぞれの特徴がよく出ています。
1972年に当該ワイナリー最初のワインであるS.L.Vを生産。1974年にはフラッグシップであるCASK23(カスク23)を生産しました。
このCASK23は当初、熟成中のS.L.Vをテイスティングしたところ、CASK23と記された大樽(1,000-gallon)のワインが他のナンバーの樽に比べて特に優れていたため、このように名付けられました。
その後1986年にネイサン・フェイからS.L.Vの隣の畑フェイ・ヴィンヤードを購入してからは、S.L.VとFAYの畑から収穫されたブドウで造られるようになりましたが、ワイン造りにおいては特に優れたブドウが収穫された年のみ造られる貴重なワインとなっています。
スタッグス・リープの勢いは止まらない
ワイナリー名にまつわるこんな逸話があった!
Stag’s Leap Wine Cellarsと同じ年に隣に設立されたStags’ Leap Wineryというワイナリーが存在します。この所有者のカール・ドゥマーニ氏とウィニアスキーはStags Leapの名前を使用する権利問題で裁判へと発展します。1986年、州最高裁判所は Stags Leapは地区の名称である事から両社に使用の権利を認めました。
ただし、混乱を避けるためウィニアスキーは「Stags」の「s」の前にアポストロフィを保持し、ドゥマーニは「s」の後にアポストロフィを記述するよう指示しました。
その後1997年にCarl DoumaniのStags’ Leap WineryはBeringerへ売却されました。
近年のスタッグス・リープについて
テイスティング・レポート
Stag’s Leap Wine Cellars Cabernet Sauvignon 1992 S.L.V vs CASK 23 ~17年の熟成を平行飲み比べ
2019年10月21日
色調は17年の熟成という事もあって縁がオレンジ掛かっておりますが、同じヴィンテージでもCASK23の方が、オレンジの色味が強い印象を受けました。
ここからは当サイト編集部独自の見解になりますが、CASK23は一般受けしやすいバランスの取れたタイプ、S.L.Vは骨格がしっかりして複雑性のある玄人受けするタイプという見解となりました。S.L.Vの方がより熟成による変化が楽しめるという印象を受けました。
追記となりますが、いずれのボトルも1992年ヴィンテージで既にコルクが半粘土化しており、抜栓時には注意が必要です。
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