ワイナリー 2021.04.30
林 亨(はやし りょう)
Pride Mountain Vineyards
Santa Rosaから車で30分、St.Helenaからは15分の距離に位置するナパとソノマに跨がるマヤカマス山脈の標高2,100フィートにある235エーカーの敷地で、1991年にJimとCarolyn Pride夫妻によって設立されたPride Mountain Vineyardsプライド・マウンテン・ヴィンヤーズの歴史と功績をご紹介します。
プライド・マウンテン・ヴィンヤーズについて
マヤカマス山脈のナパ郡とソノマ郡に跨がる場所に位置するPride Mountain Vineyardsプライド・マウンテン・ヴィンヤーズのルーツは1869年にまで遡ります。
どのような品種が栽培されていたかは明らかにされていませんが正方形の石造りで3階建てのワイナリー(60フィート×60フィート) からは、当初かなりの面積のブドウが植えられていた事が分かります。
このワイナリーはSummit Winesと呼ばれていました。
禁酒法時代(1920年から1933年)のある時期に古いワイナリーは火事で焼失し、石造りのオリジナルのワイナリーだけが残りました。1950年代にJohn and Babs Gambleがこの焼失したワイナリーを購入し、再度ブドウを植え始めました。更に1989年になるとJohn and Babs Gambleは
Jim and Carolyn Pride へこのワイナリーを売却します。
ワイナリーは購入者Jim and Carolyn Prideの名前に因んでPride Mountain Vineyardsプライド・マウンテン・ヴィンヤーズと名付けられました。
カリフォルニアの農家に生まれたJim Prideは歯科医として従事しており、全米屈指の歯科医院経営組織であるPride Instituteを設立。やがてJimとCarolyn Pride夫妻はサクラメント・バレーの米作用地を売却し、引退する場所を探し始めました。
Jimのビジネスはカリフォルニア州のマリン郡であった為、長年のワイン愛好家である夫妻はナパ郡かソノマ郡が理想的だと考えていました。
農家の生まれという事もあり土に触れる事を好んだJim Prideは土地を購入しブドウ栽培者となりました。当初は地元のワインメーカーに販売する為にブドウを栽培していましたが、自身が栽培したブドウが素晴らしいワインを生み出している事に気付くと、自らワイン造りに着手し始めます。
1991年から1996年まではRombauer VineyardsとKornell Cellarsを間借りして生産されていましたが、1998年になると敷地内に近代的なワイナリーを建設し、自社生産を開始します。
敷地の約60%がソノマ郡に40%がナパ郡にある為、テイスティングルームとワイナリーの間にはナパ郡とソノマ郡の境界線を示すレンガが敷かれています。
1992年になるとワインメーカーに
Bob Foley を迎え入れます。Robert (Bob) Foleyはカリフォルニア大学デービス校でブドウ栽培とワイン醸造学の両方の学位を取得し
Heitz Cellars やMarkham Vineyardsで経験を積みます。後にSwitchback Ridge、Hourglass、Paloma、School House Wines、Robert Foley Vineyardsでもワイン造りを担当します。
1999年にはワインの樽を保管する為に16,000平方フィートのカーブを丘の中腹に掘りました。プライド・マウンテン・ヴィンヤーズの勢いは止まりません。
大きな転機を迎えるプライド・マウンテン・ヴィンヤーズ
2003年になるとJim Prideの病気を知った
娘Suzanneと息子Steveがプライド・マウンテン・ヴィンヤーズのビジネスに参画します。
娘Suzanneの夫であるStuart Bryanは既に入社しており、1991年の最初のヴィンテージからプライド・マウンテン・ヴィンヤーズの国内販売を担当していました。
翌年2004年Jim Prideは3年間の膀胱癌との戦いの末、水曜日の朝に亡くなりました。享年66歳。
Jim Prideが亡くなって2年後の2006年にはビジネスの拡大に伴い新しいテイスティングルームと貯蔵庫の建設が進められました。この時、ブドウ畑の面積は45エーカーから約80エーカーにまで拡大していました。
更に2007年にはワインメーカーとしてSally Johnson を迎え入れます。ミシガン州アナーバー出身のSally Johnsonはミシガン大学在学中にフランスへ留学した事を機にワインに魅了されます。
その後、カリフォルニア大学デービス校でワイン醸造の修士号を取得し、St Francis Winery and Vineyardsで8年、オーストラリアのSt Hallett Wineryで1ヴィンテージを担当しプライド・マウンテン・ヴィンヤーズのチームに参画しました。
こうして新体制の下、プライド・マウンテン・ヴィンヤーズは次のステージへと駆け上がります。
リリースワイン一覧
現在、プライド・マウンテン・ヴィンヤーズでは自社の畑でカベルネ・ソーヴィニョン、メルロー、カベルネ・フラン、プティ・ヴェルドー、シラー、プティ・シラー、シャルドネ、ヴィオニエを栽培しています。また、敷地がナパ郡とソノマ郡に跨がっている為、ワインによってはナパとソノマのブレンド比率が記載されているものも存在します。
以下にフラッグシップであるカベルネ・ソーヴィニョン主体のラインナップの詳細をご紹介します。
Pride Mountain Vineyards Cabernet Sauvignon
2002年まではナパ郡側の畑から収穫されたブドウで造られていましたが、2003年からはソノマ郡側の畑から収穫されたブドウも使うようになり、ナパとソノマのブレンド比率をラベルに表記するようになりました。
Pride Mountain Vineyards Reserve Cabernet Sauvignon
収穫されたブドウの中でも特に優れたロットで造られたカベルネ・ソーヴィニョン主体のボルドーブレンド。非常にシッカリとしたストラクチャーと果実味を持つ最上級のワインに仕上がります。
Pride Mountain Vineyards Reserve Claret
メルローが主体となり、カベルネ・ソーヴィニョンの比率を下げてブレンドされるこのワインは、自社畑のうち最も優れたメルローのブロックと1982年に植えられた最も古いカベルネ・ソーヴィニョンのブロックから収穫されたブドウで造られる究極のワインです。
Pride Mountain Vineyards Vintner Select Cabernet Sauvignon
2005年からリリースされているVintner Selectはカベルネ・ソーヴィニョン100%で造られるワインです。2018年ヴィンテージからナパ郡とソノマ郡のブレンドとなりました。また、Vintner Selectシリーズにはこの他にシャルドネとメルローもあります。
近年のプライド・マウンテン・ヴィンヤーズ
2018年になると敷地の西側の区画を整地し、3エーカーのシラーを植えました。これによりプライド・マウンテン・ヴィンヤーズのブドウ畑はトータルで85エーカーにまで拡大されました。現在、Jim Prideの息子SteveがCEOとなり、娘Suzanneとその夫Stuart及びワインメーカーSally Johnsonと協力しながら創業者である父の遺志を継いでプライド・マウンテン・ヴィンヤーズを守り続けています。
ワインテイスティングレポート
Pride Mountain Vineyards Reserve Cabernet Sauvignon 19972021年4月15日
ブラックチェリーやブラックベリーのようなシッカリとした黒系果実の香りと甘草や土、コーヒー、モカのようなニュアンスも取れる。味わいは甘みはシッカリとしていて酸味は控えめ。タンニンは熟成から溶け込んでいる印象。濃縮感があり甘みが強いカリフォルニアを代表するようなカベルネ・ソーヴィニョンでした。
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