カリフォルニアの地で世界レベルのピノノワールを造りたいという同じ夢を持ったレストランの同僚Michael BrowneとDan KostaがKosta Browneを設立しカリフォルニアのトップピノノワール生産者にまで登り詰めた栄光の軌跡をご紹介します。貴重なバックヴィンテージのワインテイスティングレポートもあわせてお届けします。
コスタ・ブラウンについて
予想外の事態で廃業の危機に追い込まれるコスタ・ブラウン
コスタ・ブラウンの大躍進劇が始まる!
Michael Browneの目標はWine Spectatorの評価で90ポイント超えを獲得するという事でした。ある時、誰もが夢だと思っていたこの目標が現実となります。2003年ヴィンテージのピノノワールで2つ95点を獲得したのです。更に同じ2003年ヴィンテージの別のピノノワールでも90、92、93、93と90ポイント超えを4つも獲得しました。コスタ・ブラウン程の小さなワイナリーとしては前例のない事でした。
このニュースを聞いたMichael Browneは「恐れおののいた」と言います。コレクターや愛好家の目に留まるようになるとコスタ・ブラウンのワインはたちまち需要が急増し、オンリストするレストランが増え、毎年ヴィンテージは即時完売しました。こうしてコスタ・ブラウンはRussian River Valleyの著名な生産者の1つとなっていったのです。
暫くの間はワイナリーを持たずあちこちで場所を間借りしていましたが、最終的にSebastopolにあるリンゴ加工工場跡地を長期リースで契約しワイナリーを建設しました。
2011年にはワインスペクテイター誌が選ぶWine of The Year 2011にKosta Browne Pinot Noir Sonoma Coast 2009 が選出されました。更に2013年になるとSebastopolのリンゴ加工工場跡地を改装したアウトドア商業施設The Barlowに新しいワイナリーをオープンします。
そして、同年にロシアン・リバー・バレーのKeefer Ranchを購入し初のエステートワインを造ります。2016年になるとメンドシーノ郡アンダーソンバレーのCerise Vineyardを購入し更に幅を広げます。KostaとBrowneが事業から離れてもコスタ・ブラウンの勢いは増す一方です。
コスタ・ブラウンが管理・所有する畑と主なリリースワイン
コスタ・ブラウンでは北からAnderson Valley、Sonoma Coast、Russian River Valley、Santa Lucia Highlands、Sta.Rita Hillsの5つの地域でブドウを栽培しており、それぞれ5つの土地にリリースされるアペラシオンワインと各5地域の中の単一畑で収穫されたブドウを使って造られるシングルヴィンヤードワインの2種類に大別されます。メインはピノノワールで若干のシャルドネもリリースしています。
Mendocino郡Anderson Valley
Sonoma郡Russian River Valley
Sonoma郡Sonoma Coast
Monterey郡Santa Lucia Highlands
Santa Barbara郡Sta.Rita Hills
その他
近年のコスタ・ブラウン
2018年7月ナパバレーのDuckhorn Vineyardsがコスタ・ブラウン買収を発表しました。この買収にはコスタ・ブラウンの全ての資産が含まれます。Michael Browneが設立し、現在も所有しているCirqは含まれません。Duckhorn Vineyardsは1年前に後継者問題で苦戦していた
Calera Wine Companyを傘下に収めており勢いよく事業を拡大しているブランドです。
2020年になるとMichael Browneはロシアン・リバー・バレーの中心部に保有する自身の畑から新たにCHEVの名で新ブランドをリリースしました。
Michael Browneは現在、自身のブランドCirqでワイン造りに携わっています。Dan Kostaは著名な飲食業界の経営者Emeril Lagasseとパートナーシップを組みAldenAlliというブランドのワイナリーを設立しました。コスタ・ブラウンの創業者Michael BrowneとDan Kostaが培ったワイン造りの哲学は別の形でいまだカリフォルニアの地で存続しています。
ワインテイスティングレポート
アペラシオンワイン比較テイスティング
2020年12月21日
特定の地域(広域)のブドウをブレンドして造られるワインがこのアペラシオンワインです。今回は以下の3地域のアペラシオンワインを比較テイスティングします。
Russian River Valley Pinot Noir 2015
ブルーベリーやプラムのような香りの中に甘草のニュアンスも取れる。若干ではあるがミントのニュアンスもある。味わいは甘みは比較的シッカリと感じられまろやか。酸味はそれほど感じられずなめらか。タンニンは緻密。
St.Rita Hills Pinot Noir 2016
非常に涼しいこの地域のピノノワールはラズベリーやザクロのような赤系果実の明るい印象の中にクローブ、オレンジの皮、バラの花びらのニュアンスが取れる。味わいは甘みは比較的シッカリと感じられまろやか。酸味はSanta Lucia Highlandsと同じくらいシッカリとしていてタンニンは緻密。Santa Lucia Highlandsよりも全体的にエレガントな印象を受けました。
Santa Lucia Highlands Pinot Noir 2015
一般的にはロシアン・リバー・バレーよりも涼しいこの地域のピノノワールはラズベリーのような赤系果実の明るい印象。スミレの香りがあり若干ではあるが紅茶のニュアンスも取れる。味わいは甘みは比較的シッカリと感じられまろやか。酸味はRussian River Valleyよりもシッカリとしていてタンニンは緻密。
シングルヴィンヤードワイン比較テイスティング
2020年12月21日
特定の単一畑(狭域)のブドウのみを使用して造られるワインがこのシングルヴィンヤードワインです。今回は以下の3つのシングルヴィンヤードワインを比較テイスティングします。
Gap’s Crown Vineyard Sonoma Coast Pinot Noir 2015
ペタルマギャップの影響を強く受けて非常に冷涼なこの畑のピノノワールはラズベリーのような赤系果実の明るい印象の中にスミレやハーブのニュアンスが取れる。味わいは甘みはまろやかだが他のピノノワールと比較すると断然控えめ。酸味は非常にシッカリとしておりシャープ。タンニンは穏やか。
Keefer Ranch Russian River Valley Pinot Noir 2015
コスタ・ブラウンの畑の中で最も涼しいこの畑のピノノワールはラズベリーのような赤系果実の明るい印象の中に紅茶のニュアンスが取れる。味わいは甘みはまろやかだが他のピノノワールと比較すると断然控えめ。上品な酸味が後味に長く続きタンニンは非常にシルキー。今回のテイスティングの中で最もバランスが良く、エレガントな印象を受けました。
Giusti Ranch Russian River Valley Pinot Noir 2015
コスタ・ブラウンの畑の中でも温暖な地域に位置するこの畑のピノノワールはブルーベリーのような濃縮した黒系果実よりの香りの中にバラの花びらのニュアンスが取れる。更に若干ではあるが土やタバコのニュアンスも取れる。味わいは甘みは比較的シッカリと感じられまろやか。酸味は適度にありなめらか。タンニンは非常にシッカリとしており力強い。
全体を通してカリフォルニア特有の甘みのニュアンスは共通していますが、当編集部ではバランスが良く上品な酸味が印象的なKeefer Ranch Russian River Valleyが最も高評価でした。
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