1984年にナパバレーの中心部にあるオークビルAVAの西の丘に設立されたハーラン・エステートは、海抜225~1,225フィート(68~374 m)の標高で約240エーカー(97ヘクタール)以上の敷地を保有。ナパバレー・オークビルAVAの特異的なテロワールを活かし、フランス・ボルドー地方左岸のスタイルで造られたカリフォルニアカルトクラシックワインです。
ハーラン・エステートについて
1940年カリフォルニア州ピコ・リベラで精肉出荷業者の父と専業主婦の母の間に生まれた
Bill Harlanビル・ハーランは、1959年にカリフォルニア大学バークレー校の学生時代にナパを訪れた際に、ナパバレーでブドウ畑を所有する事を夢見るようになりました。
資金を稼ぐ為に不動産開発の事業に携わり、1979年にナパバレーの東側にある荒廃したカントリークラブを購入し、それをMeadowood高級ワインリゾートにリノベーションしました。
ここは後に毎年開催されるアメリカ最大のチャリティーワインオークションの本拠地となります。
そして、かのRobert Mondaviと交流があったBill Harlanは一緒にフランス(ブルゴーニュ、ボルドー)を5週間旅し、やがて、ボルドーワインに夢中になりました。この旅の影響を大きく受けたBill Harlanは、Oakville Grade Roadに物件を見つけ購入に踏み切ります。
1983年にはMerryvale Vineyards(ワイン名はSunny St.Helena)の設立を支援する事になります。
ここで、後にハーラン・エステートのゼネラルマネージャーとなるDon Weaver、ワインメーカーとなるBob Levy、コンサルタントとなるMichel Rollandと出会います。※1986年までにBill Harlanビル・ハーランと彼のパートナーはMerryvale Vineyards(ワイン名はSunny St. Helena)を購入します。
そして、1984年にBill Harlanビル・ハーランによってHarlan Estateハーラン・エステートが設立されました。
当初は6エーカーの畑にカベルネ・ソーヴィニョン、メルロー、カベルネ・フラン、プチヴェルドを栽培していました。
ファーストヴィンテージは1987年でしたがこれは商業的に販売しておらず、1988年と1989年も品質が不十分でリリースされなかった為、ハーラン・エステートの最初のヴィンテージは1990年となります。
ただし、リリースは1996年までされませんでした。また、ハーラン・エステートでは、自社のワイナリーが完成するまではMerryvale Vineyardsの施設を間借りしてワインを造っていました。
ハーラン・エステートのラベルはボトルに彫刻を施したように見えるデザインになっており、米国財務省が設立される前に米国の通貨を印刷していた民間の印刷会社によって作られています。
躍進を続けるハーラン・エステートの独自戦略
1990年代半ばにMerryvale Vineyardsを売却すると
1995年にはハーラン・エステートのセカンドワインThe Maidenザ・メイデンをリリースします。
このThe Maidenザ・メイデンは、ハーラン・エステートのワインに使われなったブドウから造られるセカンド的な位置付けのワインです。
ハーラン・エステート同様カベルネ・ソーヴィニョン主体ではありますが、カベルネ・フランとメルローがかなりの割合でブレンドされています。ファーストヴィンテージは1995年で1999年にリリースされました。
1997年になるとBill Harlanは
ワインメーカーのBob Levyと共同で新ブランドBONDを設立します。
このプロジェクトは畑の個性をより表現する為にカベルネ・ソーヴィニョン100%のシングルヴィンヤード専門のワインをリリースするというものでした。
ナパバレーでこれまでに付き合いのあった80以上の畑の中から厳選して5つの畑を選び抜き、ブドウを仕入れています。5つの各畑から造られるワインはMelburyメルバリー、Vecinaヴァシーナ、St. Eden セント・エデン、Pluribus プルリバス、Quella クェラという名称でリリースされています。
また、この5つの畑のブドウをブレンドしたMatriarchメイトリアークという名称のワインもリリースされています。
2000年になるとBill HarlanはThe Napa Valley Reserveというブランドを立ち上げます。
場所はセントヘレナから車で5分、ヴァカ山脈の低い丘に囲まれた80エーカーの田園地帯にあります。
また、この場所は1979年にBill HarlanがリノベーションしたMeadowood高級ワインリゾートに隣接しています。
このThe Napa Valley Reserveは同じ名前の高級会員制クラブのメンバーの為だけに造られたワインブランドです。600人以上いるメンバーは、The Napa Valley Reserveを社交場とし、The Napa Valley Reserveワインを購入して楽しみますが、自分のプライベートキュヴェをブレンドして瓶詰めする事で、ハーランのチームから直接ワイン製造を体験する事ができます。
入会金が155,000ドル、年会費が1,000ドルです。
2002年にハーラン・エステートはOvid、Dana Estate、Futo Estate等を含む数多くのワイナリーを設計してきた建築家Howard Backenによって独自のワイナリーを完成させます。
清潔さと美学が鍵となるハーラン・エステートのワイナリーでは、石造りの門を抜けると手入れが行き届いた中庭があります。
バレルルームでは樽がlaser sightによって整列されています。落ち着いた空間のテイスティングルームも完備されています。
セカンドワインのリリース、新ブランドの立ち上げのみならず業界初の高級会員制ワインクラブまで立ち上げるハーラン・エステート創設者Bill Harlanの独自戦略は業界において他の追随を許しません。
Harlan Estate’s 200-Year Plan
「ナパバレーには国の宝となるチャンス、可能性があると思う」とBill Harlanは考えます。ヨーロッパ、主にフランスの偉大なワイン醸造家が伝統的に築き上げてきたワイン王朝をこのナパバレーでも築き上げていく事こそ、Bill Harlan率いるハーラン・エステートが掲げる200年計画なのです。
このハーラン・エステートの200年計画の第1歩としてBill Harlanは息子のWill Harlanウィル・ハーランをワイン醸造に関与させ、将来を見据えて業界とのつながりを確立しました。そして、Will Harlanは家業のいくつかの部門の手綱を引き継ぐようになります。
Will Harlanはハーラン・エステート、BONDボンド等に使うブドウ樹の若木の樽をメインに使用し、友人や家族で楽しむワインとして造っていた名もなきプライベートワイン
「The Mascot(マスコット)」を2008年に商業的にリリースします。
ハーラン・エステートのラベルのルーツは全て銀行に結び付いています。
このThe Mascot(マスコット)もその伝統を引き継いでおり、ラベルに描かれている犬はBull-Terrierブル・テリアという犬種で当時、銀行に住んでいたシンボル犬です。
同じく2008年にWill Harlanは
Promontory Wineプロモントリー・ワインを設立します。
1984年に父Bill Harlanがハーラン・エステート設立の為の土地を発見し購入した際に、数百メートル南にあるドミナス・エステートに隣接する孤立した場所にも目を向けていました。
所有者はその土地を売る事はしませんでしたが、2008年に市場に出た際にBill Harlanは念願のこの土地を迷わず購入しました。
この土地は堆積性と火山性であるが、片岩、頁岩、片麻岩も含まれる多様な土壌タイプで、ハーラン・エステートやボンドとは大きく異なりました。
そして息子Will Harlan主導の元、2009年にPromontoryの最初のヴィンテージをリリースします。また、Promontoryでは、イタリアワインBaroloに使われるオーストリア産の樽Stockingerの品質に感銘を受け米国で初めて輸入し、使用しています。
ハーラン・エステートが獲得した数々の実績
2000年に開催されたNapa Valley Wine Auctionで1987年から1996年までの10年間のハーラン・エステート・マグナムボトルが70万ドルという高値で落札されました。
更にハーラン・エステートは、イギリスの著名なワインライターJancis Robinsonから「20世紀の10の最高のワインの1つ」に選定されました。
また、ロバート・パーカー監修ワインアドヴォケイト誌による採点でハーラン・エステートは8回の100点満点を獲得しています。
※1994、1997、2001、2002、2007、2013、2015、2016年ヴィンテージ
2015年には世界的に有名な米国のワイン・スペクテーター誌がワイン業界に多大かつ長期にわたって貢献してきた個人に贈るDistinguished Service Award 2015でBill Harlanを選びました。
近年のハーラン・エステート
Bill Harlanが掲げた「ハーラン・エステートの200年計画」から約40年が経ちましたが、このフェーズ1では妻のDeborah、息子のWill、娘のAmandaが計画に協力し、ハーラン・エステートの文化を築いてきました。2020年に80歳を迎えるBill Harlanはフェーズ2に向けて、次の40年間の為の準備を整えています。
テイスティング・レポート
Harlan Estate 1990 vs The Maiden 2009 vs The Mascot 2008
2020年6月4日
Harlan Estate 1990 – first vintage
ハーラン・エステートのファーストヴィンテージである1990は香りにブラックチェリーや熟したプラムのニュアンスが感じ取れる。次に土やタバコの微かな香りが取れ、ややスモーキー。味わいは甘みが非常にソフトで酸味は比較的シッカリしており、苦味は熟成からか溶け込んでいる。良い意味で甘みがなくエレガントな仕上がり。
The Maiden 2009
ブラックチェリーやブラックベリーといった黒系果実の濃縮した甘い香りから始まり、甘草や杉のニュアンスも取れる。また、微かにダークチョコレートやココアのニュアンスもある。味わいは甘みがあり、酸味は滑らか。苦味には収斂性がある。ハーラン・エステートとは異なり甘みが豊富な印象。
The Mascot 2008 – first vintage
マスコットのファーストヴィンテージである2008はブラックチェリーやブラックベリーといった黒系果実の濃縮した甘い香りから始まり、カベルネ・ソーヴィニョン特有の杉や針葉樹のニュアンスがあり、コーヒーの香りも取れる。味わいは甘みがあり、酸味は滑らか。苦味には収斂性がある。The Maidenとの違いはコーヒーのニュアンスと強いタンニン。
当編集部ではHarlan Estate 1990だけが別格に高評価でした。甘みを抑え、シッカリとした酸味と独特な苦味のバランスは見事でした!
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