ワイナリー 2020.10.02
2021.05.31
林 亨(はやし りょう)
Grgich Hills Estate
Chateau Montelena Wineryで1976年のパリテイスティング優勝のシャルドネを造り、1980年にシカゴで開催された世界のシャルドネ221種のブラインドテイスティング対決でGrgich Hills Wine Cellar Sonoma County Chardonnayを優勝に導いたワイン醸造家Miljenko “Mike” Grgichが1977年にラザフォードで設立したGrgich Hills Estateガーギッチ・ヒルズ・エステートの歴史と栄光の軌跡をご紹介します。
ガーギッチ・ヒルズ・セラー設立までの経緯
1923年にクロアチアのダルマチアにある小さなデスネという村で生まれた
Miljenko “Mike” Grgichマイク・ガーギッチ は、父親が小さな農場を所有していた事もあり幼少期からワイン用のブドウに触れる機会がありました。
やがて、クロアチアのザグレブ大学でブドウ栽培学とワイン醸造学を学ぶと教授の1人がカリフォルニアの農業資源を高く評価していた事に強い影響を受け北米へ渡ります。
1958年にChateau Souverainでワイン造りの仕事に就きます。その後Christian Brothers Cellars、Beaulieu Vineyard、Robert Mondavi で経験を積み1972年にChateau Montelena でワインメーカーに就任します。
シャトー・モンテレーナでマイク・ガーギッチが手掛けたChateau Montelena Chardonnay 1973が1976年に開催された伝説の米仏ブラインドテイスティング対決として知られる「パリテイスティング 」の白ワイン部門で見事1位に輝きました。その時の順位は以下の通りです。
パリテイスティングの白ワイン部門(点数は180点満点中の点数)
1位 (米) Chateau Montelena 1973
132点
2位 (仏) Meurault Charmes Roulot 1973
126.5点
3位 (米) Chalone Vineyards 1974
121点
4位 (米) Spring Mountain 1973
104点
5位 (仏) Beaune Clos des Mouche Joseph Drouhin 1973
101点
6位 (米) Freemark Abbey 1972
100点
7位 (仏) Batard Montrachet Ramonet 1973
94点
8位 (仏) Puligny Montrachet Les Pucelles Leflaive 1972
89点
9位 (米) Veedercrest 1972
88点
10位 (米) David Bruce 1973
42点
マイク・ガーギッチの功績によりシャトー・モンテレーナは世界中にその名を轟かせたのです。マイク・ガーギッチは5年間のシャトー・モンテレーナにおけるワインメーカーの任期が満了に近づくにつれ、自身のワイナリーを持つ事を夢見るようになっていました。
マイク・ガーギッチはかねてより交流のあったサンフランシスコに本社を置く大手コーヒー製造業者Hills Brothers Coffeeの
Austin Hillsをビジネスパートナーに迎え、カリフォルニア州ラザフォードに20エーカーの土地を購入し1977年7月4日のアメリカ独立記念日にGrgich Hills Cellarを設立します。
Austin Hillsはビジネスと財務を管理し、マイク・ガーギッチはワイン造りに専念するといった役割分担でした。
ガーギッチ・ヒルズ・エステートについて
創業時から順調に評判を得ていたガーギッチ・ヒルズは1980年にシカゴの3つのワインショップの協力を得て開催された世界のシャルドネ221種のブラインドテイスティング
The Great Chardonnay Shootout にエントリーしました。
そして驚くことにマイク・ガーギッチが手掛けたGrgich Hills Wine Cellar Sonoma County Chardonnay 1977が優勝したのです。
パリテイスティングでの快挙に続きまたもやマイク・ガーギッチのシャルドネが伝説を作りました。
1984年になるとガーギッチ・ヒルズ初のカベルネ・ソーヴィニョンをリリースします。1989年にはカーネロスに101エーカーの土地を、1996年にはアメリカンキャニオンに203エーカーの土地を、そして1997年にはカリストガにある110年前のジンファンデルのブドウ畑を購入し生産の幅を広げます。
そして2001年にジンファンデル、2002年にメルローをラインナップに加えると、全てのワインを自社畑産のブドウのみで造るというポリシーに因んで2007年にGrgich Hills CellarからGrgich Hills Estateへと名称を変更 し、更に躍進していきます。
ナパバレー・ワイントレイン
1989年にナパとセントヘレナを往復するナパバレー・ワイントレインが開通しました。この列車はナパ市内の駅を出発すると州道29号線に沿ってヨントヴィル、ラザフォード、オークヴィルを経由してセントヘレナまで向かいます。
運行ルートにはナパバレーを代表する数々のワイナリーが立ち並んでおり、車内ではワインと食事を楽しみながらワイナリーの景色を堪能する事が出来ます。
この運行ルートには33のワイナリーが点在し、そのうち12のワイナリーがナパバレー・ワイントレインと提携しており訪問が可能となっています。この12の提携ワイナリーの1つがガーギッチ・ヒルズ・セラーで、現在もナパバレー・ワイントレインのツアー客の訪問を受け入れています。
所有・管理する畑の一覧
ガーギッチ・ヒルズ・エステートでは一般に販売されるナパバレーセレクション 、ワインクラブのメンバーとワイナリーの訪問者向けの特別区画から造られるミルジェンコセレクション 、テイスティングルームで入手できるレガシーセレクション の3つに分類されます。
取り扱い品種はカベルネ・ソーヴィニョン、メルロー、ジンファンデル、プティシラー、プティヴェルド、シャルドネ、ソーヴィニヨンブラン(フュメブラン)、レイトハーベスト(ソーヴィニヨンブラン、リースリング、ゲヴェルツトラミネール)と幅広いラインナップ。これらのブドウが栽培される各畑の詳細をご紹介します。
CALISTOGA
1997年に購入したこの畑は日中の強い日差しと冷涼な夜間の気温差がジンファンデルの栽培にうってつけの土地です。ジンファンデル、カベルネ・ソーヴィニョン、プティシラー、メルローが栽培されています。
AMERICAN CANYON
1996年に購入したこの畑は所有する5エリアの中で最大の面積を誇ります。冷涼な気温と強風の影響でより高品質で凝縮感のある果実を収穫する事が出来ます。シャルドネ、ソーヴィニヨンブラン、メルロー、リースリング、ゲヴェルツトラミネールが栽培されています。
RUTHERFORD
1977年に購入したこの畑は温暖な気候が特徴でカベルネ・ソーヴィニョンの栽培に適しています。カベルネ・ソーヴィニョンの他に若干のプティヴェルドも栽培されています。
CARNEROS
1989年に購入したこの畑は霧によって太陽が遮られ冷涼な気候となる事からシャルドネの栽培に適しています。シャルドネの他に若干のメルロー、ソーヴィニヨンブラン、カベルネフランも栽培されています。
YOUNTVILLE
1984年に購入したこの畑は谷底に位置している事からボルドー品種の栽培に適しています。カベルネ・ソーヴィニョンの他に若干のメルロー、プティヴェルドも栽培されています。
近年のガーギッチ・ヒルズ・エステート
マイク・ガーギッチは1976年のパリテイスティング及び1977年に設立した自身のブランドガーギッチ・ヒルズ・エステートがワイン業界に与えた貢献が評価され、The Culinary Institute of America(料理の学位を付与するプロフェッショナル・スクール)によって
2008年3月7日にVintners hall of fame(ワイン醸造の殿堂入り)に選ばれました。 また、マイク・ガーギッチは1995年に故郷であるクロアチアでもGrgicVinaというワイナリーを立ち上げ貢献してきました。
マイク・ガーギッチは2020年4月1日で97歳を迎えました。2017年に娘のViolet Grgichに社長を引き継ぎ、甥のIvo Jeramazをワインメーカー兼副社長に据えて今もガーギッチ・ヒルズ・エステートのワイン造りを見守っています。
最近ではIvo Jeramazの長女Maja JeramazとAustin Hillsの息子Justin Hillsがガーギッチ・ヒルズ・エステートのビジネスに参画しており、三世代目まで引き継がれる事でマイク・ガーギッチのワイン魂はこの先も守られていく事でしょう。
ワインテイスティングレポート
Grgich Hills Cabernet Sauvignon 19872020年9月23日
ガーギッチ・ヒルズ・エステートでは2007年にGrgich Hills CellarからGrgich Hills Estateへと名称を変更したため、1987年ヴィンテージは未だGrgich Hills Cellarでした。また、現在のエチケットはカラーですがこの頃はモノクロというとっても希少な1本です。
ブラックベリーや干しプラムの香りから始まり黒スグリやカベルネソーヴィニヨン特有の杉や針葉樹のニュアンスも若干取れる。ほんのりタバコや枯れ葉のニュアンスも取れる。味わいは甘みはソフトで酸味は比較的シッカリとしている。タンニンはこのヴィンテージでも力強い印象を受ける。全体的なバランスは抜群で酸味がやや強めという事もありエレガントにまとまっていました。素晴らしい!
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