ソノマとナパに跨り太平洋とサンパブロ湾からの涼しい風の影響を強く受け、火山性と砂利の土壌を持つ理想的なピノノワールの成長条件を作り出すLos Carneros AVA産のピノノワールに拘り、アメリカから世界クラスのピノノワールを発信していく事を夢見てTonySoterが設立したEtude Wineryエチュード・ワイナリーの歴史と功績をご紹介します。
エチュード・ワイナリーの歴史
オレゴン州ポートランド出身の
TonySoterはカリフォルニア州クレアモント市にあるポモナ・カレッジで哲学を学んだ後、1975年から
Stag’s Leap Wine CellarsをはじめStonegate、Spring Mountain、Chappellet、Sequoia Grove、Robert Pepi、
Spottswoode、Niebaum-Coppola、Viader、
Dalla Valle、
Shafer、
Araujo等の著名なワイナリーに関与してきました。
1982年になると個人ブランドとしてEtude Wineryエチュード・ワイナリーを設立します。
Etudeには「音楽家が特定の技術を練習する為の楽曲」という意味があります。そしてこの楽曲(Etude)は時として芸術レベルにもなり得る事からTonySoterはワイナリーにEtudeの名を選びました。
1982年に生産された最初の500ケースはYountvilleの南、Darms Laneにある著名なブドウ栽培家でありNewlan Wineryの創設者でもあるBruce Newlan氏の畑から収穫されたものでした。
1986年になるとTonySoterはソノマ郡とナパ郡の両方に跨るLos Carneros AVAでより良い資源を見つけ、Larry HydeやLee HudsonといったLos Carneros AVAで最も有力な独立系生産者と親睦を深めるようになりました。
このような背景からエチュード・ワイナリーのピノノワールは殆どがLos Carneros AVA産となっていました。
エチュード・ワイナリーは1982年から1994年まで、ほぼTonySoterワンマンで運営されていました。その間、3人よりも少ない給料なうえ、TonySoterは生産者との関係構築やワイン造り、銀行からの借り入れ等、殆どの業務を自らこなしていました。
翌年1995年になるとTonySoterはようやくEric Hamacherにワイン造りを任せ、1996年から2000年まではScott Richがワイン造りの任務を担当するようになりました。
エチュード・ワイナリーが迎えた大きな転機
ピノノワールに執着していたTonySoterはカリフォルニアよりも涼しい地域で、上質なピノノワールの栽培を可能にするオレゴン州に惹かれ、1997年にオレゴン州ウィラメットバレーで自身の名を冠した個人ブランドSoter Vineyardsをオレゴン州出身の妻Michelleと共に設立し、移住します。
翌年1998年に長女Oliviaが生まれるとTonySoterはコンサルティング事業を辞め、エチュード・ワイナリー、ソーター・ヴィンヤーズ、そして家族に多くの時間を費やすようになりました。
エチュード・ワイナリーのEtude Pinot Noir 2000は日本の有名な漫画「神の雫」でも取り上げられました。
作中のナパバレー・ワイン・トレインにて遠峰とローランが飲んだ赤ワインとして取り上げられています。
2001年になるとTonySoterはエチュード・ワイナリーをBeringer Blass Wine Estates(現Treasury Wine Estates)へ売却します。
Beringer Blass Wine EstatesはカリフォルニアのBeringer VineyardsとオーストラリアのMildara Blassが合併してできた巨大企業です。エチュード・ワイナリーは醸造施設を持たない為、ブランドと既存の在庫のみの取引となります。翌年2002年には新オーナーとTonySoterが協力してRMS蒸留所跡地を購入し、エチュード・ワイナリーの新ワイナリー施設を建設しました。
2005年になるとワインメーカーとしてJon Priestを迎え入れます。セントラルコースト出身のJon Priestは1985年にワシントン州のWhitworth Universityを卒業するとWild Horse Winery、Adelaida Cellars、TAZ Vineyardsでワインメーカーとして約15年間もの経験を積んだ経歴を持ちます。
TonySoterはエチュード・ワイナリーを売却した後も2007年までコンサルタントとして毎月オレゴンからナパを訪れ、エチュード・ワイナリーに関与し続けました。
リリースされているピノノワール一覧
エチュード・ワイナリーではピノノワールを中心に生産されており、管理する畑の敷地内には約20種類のピノノワールクローンが土壌タイプに合わせ小さなブロックごとに植えられています。
以下に各ピノノワールの詳細をご紹介します。
Grace Benoist Ranch
Los Carneros AVAの北西端に位置するこのエステート(自社畑)。一般的なカーネロスの土地は湾の底が隆起して粘土質の土壌になっているのに対し、この土地の土壌は火山性で水はけの良い岩の多い高台の土壌になっている。また、太平洋に近い西側の立地と相まってブルゴーニュ品種の栽培に理想的な場所となっています。この自社畑のピノノワールを使って造られるワインがEstateとしてリリースされますがGrace Benoist Ranchの中にはLaniger、Deer Camp、Temblor、Heirloomの4つの畑が存在し、それぞれ単一畑シリーズとしてリリースされています。
Hallberg Vineyard
この畑はソノマ郡セバストポルのすぐ外に位置し、砂質粘土ローム土壌が下にあるゴールドリッジ土壌を特徴としている。約20マイル離れた太平洋からの霧と涼しい沿岸のそよ風によってきめ細かなタンニンとエレガントな酸味を持つワインを造りだします。
Ellenbach
太平洋からわずか4マイル離れたソノマ郡北部アナポリスにあるこの畑は霧の上に位置し、夜間は非常に涼しく酸味が保たれ、日中は長く強い日差しが降り注ぐ為、ブドウはゆっくりと均一に熟す事ができます。水はけの良いゴールドリッジ土壌と、急勾配の丘陵地が相まって複雑さと凝縮感を兼ね備えたワインが造られます。
North Canyon Vineyard
サンタ・バーバラ郡最北のAVAであるサンタ・マリア・バレーに位置するこの畑は太平洋に近い事から冷涼な海洋性の影響を強く受け、石灰質の粘土質砂岩の土壌と相まって高品質なピノノワールの生産を実現します。
Fiddlestix Vineyard
この畑はサンタ・バーバラ郡のサンタリタヒルズ地域にあります。太平洋からの風と冷たい空気の影響を受けてエレガントなワインが造られます。
Forte Fiddlestix Vineyard
サンタ・バーバラ郡のサンタリタヒルズ地域のFiddlestix Vineyardの中でも特に厳選して、熟成期間を長くとって造られるワインです。
この他にカリフォルニア州よりも涼しい気候でピノノワールの栽培に適したオレゴン州ウィラメットバレーでエチュード・ワイナリーが手掛けるピノノワールYamhill Vista Vineyard、Yamhela Vineyardやニュージーランド・セントラルオタゴで手掛けるBannockburnがあります。
近年のエチュード・ワイナリー
2017年5月になるとエチュード・ワイナリーはワインメーカーとしてMarc Zaccariaを迎え入れます。Marc Zaccariaはカリフォルニア工科州立大学サンルイスオビスポ校でブドウ栽培とワイン醸造学の学位を取得するとTreasury Wine Estates、Wolf Blass、Chateau St.Jean Winery等で10年以上の経験を積んでエチュード・ワイナリーに参画。
2005年に創業者TonySoterからワインメーカーの職を引き継ぎます。
これまでエチュード・ワイナリーの品質を守り抜いてきたJon PriestはSenior Winemaker兼General ManagerとなりMarc Zaccariaと共に世界クラスのワインを造り続けています。
ワインテイスティングレポート
Pinot Noir比較テイスティング
2021年4月16日
Etude Pinot Noir Carneros 2008
カシスやブルーベリーの香りと甘草や微かにバラの花びらのニュアンスが取れる。味わいは甘みがシッカリとありまろやか。酸味は控えめでなめらか。タンニンはピノノワールにしてはシッカリと感じられる。
Etude Pinot Noir Heirloom 2000
Grace Benoist Ranchの1画にあるHeirloomは、7エーカーの区画に10種類のピノノワールクローンが植えられています。1995年がファーストヴィンテージでメーリングリストとワイナリーで販売された限定品。房が小さくて不規則な形をしており、果実も非常に小さいという特徴を持つシャイ・ベアリング・クローンから造られる為、年間でわずか300~400ケースの限定生産となります。
プラムやブラックチェリーのような果実味豊かな香りと微かにスミレや紅茶のニュアンスも取れる。味わいは甘みはソフト~まろやか。酸味は上品な酸味が長く続いてタンニンは緻密。
果実味が豊かで上品な酸とタンニンから非常にエレガントな印象を受けました。素晴らしい!
※ボトルの最後に「Tony」の文字が見えますが本人の直筆サインなのでしょうか?
Etude Pinot Noir Bannockburn 2014
ニュージーランド・南島のセントラルオタゴで造られるエチュード・ピノノワールの1つ。レッドチェリーやブラックチェリーのようなアロマティックな香りとクローブやスパイス、スミレのようなニュアンスも取れる。味わいは甘みは控えめで酸味はシッカリとしておりタンニンは緻密。ニュージーランドのピノノワールらしい特徴が良く出ていました。
総評としてHeirloom 2000の熟成感、エレガントさ、バランスがズバ抜けて印象的でした。
Etude Cabernet Sauvignon 1996
2021年4月15日
カシスや干しプラムのような黒系果実寄りの香りと杉やスモーキーなニュアンスが取れる。味わいは甘みは控えめで酸味はシッカリとしておりエレガントな印象を与える。タンニンはこのヴィンテージでも微かに収斂性が感じられる。長く続く線の細い酸味が全体をエレガントな印象にまとめている。
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