ワイナリー
林 亨(はやし りょう)
Eisele Vineyard
1880年代から存在する歴史あるブドウ畑Eisele Vineyardアイズリー・ヴィンヤードは、ナパバレーの北東カリストガに位置し、非常に特徴的なテロワールから並外れた高品質なカベルネ・ソーヴィニョンを造りだす事で定評があります。ここではこのEisele Vineyardアイズリー・ヴィンヤード(旧Araujo Estateアローホ・エステート)が辿った歴史と輝かしい実績をご紹介します。後半では貴重な「Araujo Estate」時代のバックヴィンテージのワインテイスティングレポートもあわせてお届けします。
アイズリー・ヴィンヤードについて
ナパバレー・カリストガに1886年から存在する歴史あるEisele Vineyardアイズリー・ヴィンヤードには当初、ジンファンデルとリースリングが植えられていました。その後、1964年にはカベルネ・ソーヴィニョンが植えられるようになりました。
1969年になるとMilton EiseleとBarbara Eiseleがこの畑を購入し、ブドウはRidge Vineyards、Joseph Phelps、Conn Creekをはじめとしたナパバレーの大規模生産者に販売されていました。
主な販売先はRobert Mondavi Wineryロバート・モンダヴィ・ワイナリーでしたが、ロバート・モンダヴィ側がラベルにアイズリー・ヴィンヤードを表記する事を拒んだ為、他の生産者に販売するようになりました。
瞬く間に消費者、ワインメーカー、評論家の間でアイズリー・ヴィンヤードから生産されるワインの品質の高さが評価されるようになりました。
アローホ・エステート・ワインズとして再始動
1990年になるとEisele家が
BartとDaphne Araujo夫妻にアイズリー・ヴィンヤードを売却します。
サンフランシスコ出身のBart Araujoは南カリフォルニア大学(USC)とハーバード・ビジネス・スクールに通い、ロサンゼルスを拠点に住宅建設会社を設立し成功を収めました。住宅建設会社を売却した後、ナパバレーでブドウ畑を探しているところでアイズリー・ヴィンヤードに巡り合います。
BartとDaphne Araujoは翌年1991年にワイナリーを建設し、ブドウ畑の植え替えの監修にDavid Abreu、コンサルタントにTony Soter、ワインメーカーにスタッグス・リープ・ワイン・セラーズとエチュードでの経験を持つフランス人女性のFrancoise Peschonを迎え入れ、本格的に生産体制を整えます。こうして歴史あるアイズリー・ヴィンヤードはAraujo Estate Winesアローホ・エステート・ワインズとして再始動したのです。
敷地は162エーカーで、そのうち38エーカーはブドウの樹が植えられています。火山性の沖積扇状地であり、岩が非常に多い為、水はけが良いのが特徴です。
ブドウの樹が植えられた土地は日中の気温の変化が最も大きく、ある時期には華氏40~50℃(摂氏4.4℃~10℃)にもなる事もあります。また、ソノマ郡への近さとマヤカマス山脈のギャップから太平洋の影響を受けた涼しい風を受ける事も珍しくありません。
2000年からはビオディナミ農法を実践しており、サスティナブル農法を用いて独自のテロワールから最高の表現を得られるように設計されています。
主なリリースワイン
アイズリー・ヴィンヤードではフラッグシップであるカベルネ・ソーヴィニョンの他にソーヴィニョン・ブラン、ヴィオニエ、シラーの生産も行っています。以下に各ワインの詳細をご紹介します。
Cabernet Sauvignon
アイズリー・ヴィンヤードの面積の3/4を占めるカベルネ・ソーヴィニョンを主体としてカベルネ・フラン、プティ・ヴェルド、メルローをブレンドします。※ブレンド比率は年によって異なります。ファーストヴィンテージは1991年。
Altagracia
Bart Araujoの祖母に因んで名付けられたアルタグラシアは自社畑(主に東側の区画)と購入したブドウから造られるカベルネ・ソーヴィニョンをベースにしたセカンドワインで早飲みタイプです。ファーストヴィンテージは1999年です。
Syrah
シラーは1978年に初めて植えられ、1991年と1993年にこの古い樹から収穫したブドウでワインを造った後は増殖し、生産量を増やしていきました。2012年までは少量のヴィオニエをブレンドして造られていました。ファーストヴィンテージは1994年。
Sauvignon Blanc
ソーヴィニョン・ブランはアイズリー・ヴィンヤードの東側の区画に植えられている為、丘陵地という事もあって午後の日差しから守られ、このワインのフレッシュさとエネルギーが保たれています。ファーストヴィンテージは1993年。
Viognier
元々はシラーとのブレンド用にアイズリー・ヴィンヤードの東側の区画に少量植えられましたが、単独でリリースしても遜色ないレベルの品質であった為、2002年より単独で生産が開始されました。
近年のアイズリー・ヴィンヤード
2013年にフランスの実業家Francois Pinaultフランソワ・ピノー率いるGroup Artemisがアイズリー・ヴィンヤードを買収しました。Group Artemisはフランス・ボルドー地方にある五大シャトーの1つChateau Latour、フランス・ブルゴーニュ地方のClos de Tart、フランス・ローヌ地方のChateau-Grillet等数多くのワイナリーを所有する投資会社です。
これに伴いワイナリーの名前がアラウホ・エステートからアイズリー・ヴィンヤードに変更されました。新体制で最初にリリースされたEisele Vineyard Cabernet Sauvignon 2013は、ロバートパーカー監修ワインアドヴォケイト誌にて100点満点を獲得しました。
ワイナリーを売却した後もAraujo夫妻はワイン業界に残り、翌年2014年にセントヘレナでWheeler Farmsを設立。現在でもカベルネ・ソーヴィニョンを主軸とした高品質なワイン造りを進めています。
ワインテイスティングレポート
Araujo Estate Cabernet Sauvignon Eisele Vineyard 1996
2021年1月13日
ブラックベリーのような黒系果実の香りと若干の杉、針葉樹、土、タールのニュアンスが取れるが控えめ。味わいは甘みがさほど強くなくソフト。酸味はシッカリとしており、タンニンはこのヴィンテージでも強く感じられ収斂性がある。
アタックが強くタンニンもシッカリしているが果実味と後味に長く続く上品な酸味の影響で全体的にエレガントなまとまりがある。素晴らしい!
Araujo Estate Syrah Eisele Vineyard 1999
2021年1月13日
ブラックベリーやブラックチェリーのような黒系果実の香りの中に微かにスパイシーでスモーキーなニュアンスが取れる。また、ヴィオニエが6%ブレンドされている事もあり蜂蜜やアプリコット、桃のニュアンスも取れる。
味わいは甘みは控えめで酸味は比較的シッカリとしている。タンニンは緻密。ヴィオニエのブレンドから来るアプリコットのニュアンスが非常に心地良い印象を受けました。素晴らしい!
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