1978年にRandy Dunnランディー・ダンが標高1,800フィートのハウエル・マウンテンにあるモミの木に囲まれた霧の上の土地にダン・ヴィンヤーズを設立しました。ダン・ヴィンヤーズでは決して濃厚でアルコール度数が高いワインを造らず、カベルネ・ソーヴィニョン100%のエレガントで長期熟成を実現する高品質なワインを生み出します。
ダン・ヴィンヤーズについて
1975年から
ケイマス・ヴィンヤーズでワインメーカーとして従事していた
Randy Dunnランディー・ダンは、ワインメーカーの業務が終わるとカリフォルニア州北部のYolo郡Wintersの自宅で自身のワイン造りに励んでいました。
やがて自身のワインを商業的な量で生産しようと、1978年にナパ郡ハウエル・マウンテン地区のAngwinに14エーカーの土地を40,000ドルで購入しました。そのうち5エーカーにはカベルネ・ソーヴィニョンが植えられていました。敷地内の古い家はかつてケイマス・ヴィンヤーズのチャック・ワグナーが所有していたWestern Unionの駅馬車の停留所でした。
※スタッグス・リープのウォーレン・ウィニアルスキーが少しの間居住しており、現在はダン・ヴィンヤーズのオフィスとして活用しています。
更に同じ年にHarry Frank Vineyardからブドウを仕入れる契約を締結し、2つのブドウ畑から合計9トンのブドウを調達しました。その後、Beatty Ranchからも3トンのブドウを調達する事に成功しました。
ここではRandy Dunnと妻Loriそして息子のMikeが栽培に携わり、1981年にダン・ヴィンヤーズのファーストヴィンテージをリリースします。1979年から1981年は5エーカーの従来から植えられていたカベルネ・ソーヴィニョンでワインを造っておりケイマス・ヴィンヤーズの敷地を間借りしていましたが、ブドウの品質の問題でこの3ヴィンテージのみに留めました。
ダン・ヴィンヤーズとして正式に動き出したのは1981年です。
勢いに乗るダン・ヴィンヤーズ
1983年にハウエル・マウンテン地区がAVA(アメリカ葡萄栽培地域)に認定されました。ダン・ヴィンヤーズはこの認定獲得に大きく貢献したと考えられています。
この頃にはダン・ヴィンヤーズは成功を収めており、生産量増加から敷地内の保管施設が手狭になっていたため、1989年に山にトンネルを掘って樽貯蔵用の洞窟を建設しました。
翌年1990年には、かつてリッジ・ヴィンヤーズが自社畑として保有していたPetite Sirahプティ・シラーが栽培されている歴史ある40エーカーのPark Muscatine Vineyardを購入し、更なる強化を図ります。
ダン・ヴィンヤーズではワイン醸造の際に無菌ろ過をしていなかったため、1997年と1998年にワイン醸造では発生・混入がNGとされているBrettanomyces(ブレッタノマイセス)という酵母が発生してしまい、ワインに紛れもないアクセントが残ってしまいましたが、2001年から無菌ろ過を実施するようになり、2002年には全ての樽が交換されました。
1999年になると1度は家族の仕事から離れていた
息子のMike Dunnが戻ってきました。
また、娘のKristina Dunnがカリフォルニア・ポリテクニック州立大学を卒業し、ワイン醸造とブドウ栽培の学位を取得し、ダン・ヴィンヤーズに参画しました。
※Dunn一家には最年長の長女Jenniferがいましたが1999年に細菌性髄膜炎にかかり亡くなっています。
2003年に息子Mikeとその妻Kara Dunnはハウエル・マウンテンのMuscatine Vineyardで
Retro Cellarsを立ち上げます。Mikeは実家であるダン・ヴィンヤーズが所有するMuscatine Vineyardに植えられていたPetite Sirahプティ・シラーに焦点をあて、このRetro Cellarsを設立しました。
妻KaraはPecota VineyardのRobert Pecotaの娘で、Retro Cellarsではマーケティングを担当しています。
また、同じく2003年にワシントンワイン業界の新構想として、ワシントンワイン産業の創始者Allen Shoupが主導となりLong Shadowsを設立します。
このブランドは世界の主要なワイン産地から国際的に高く評価されている人物で構成される超プレミアムワイナリーの集合体であり、それぞれが最高品質の単一コロンビアバレーワインを生産するために集められたドリームチームです。
何とこのメンバーの1人にRandy Dunnが選ばれました。Long Shadowsは2007年に早くもFood & Wine MagazineからWinery of the Yearに選出されました。
Dunn Trailer Vineyard Cabernet Sauvignon
参照元:winebid.com
2012年には
第3弾としてTrailer Vineyardをリリースします。
この畑はダン・ヴィンヤーズが1978年に最初に購入した畑で、元々、カベルネ・ソーヴィニョンが植えられており、そのブドウを使いますが、他のワインで使うブドウよりも少し熟したブドウを使い、他のワインで施すアルコール低減作業を行わずに造られます。
この畑の健康状態が良好でないため、2013年の収穫後に植え替えられます。よって、Dunn Trailer Vineyard Cabernet Sauvignonは2012年と2013年の2ヴィンテージのみのリリースとなりました。
2016年になると息子MikeがRetro Cellarsで使っていたMuscatine VineyardのPetite Sirahプティ・シラーブロックをカベルネ・ソーヴィニョンに植え替え、ダン・ヴィンヤーズとして更なる体制の強化を図ります。
Retro Cellarsで使うためのPetite Sirahプティ・シラーは2005年に近くの1エーカーの土地で栽培されています。
2018年にはSaunter WinesのオーナーJosh Clarkによって、カベルネ・ソーヴィニョンが植えられた6.5エーカーのEagle Summit Vineyardを購入しました。この畑は標高2,100フィートの高地にあり、Alta Tierra VineyardとFrank Vineyardの間に位置します。こうしてダン・ヴィンヤーズの保有・管理する畑は5つになりました。
ダン・ヴィンヤーズが保有・管理する5つの畑
ダン・ヴィンヤーズのワインが造られるブドウは自社が所有する畑からと他社の所有するダン・ヴィンヤーズ管理下の畑からの2種類があります。以下に各畑の詳細をご紹介します。
Alta Tierra Vineyard
1978年に購入した最初の畑で元々はTrailer Vineyardと呼ばれていました。古いカベルネ・ソーヴィニョンが植えられていましたが、畑の健康状態が良好でなかったため、2013年の収穫後に植え替えられました。
Lake Vineyard
ワイナリーとDunn一家の家屋に隣接している場所にあり、
最初の20年間は飼育用の馬のための干し草を栽培していました。2005年に息子MikeがRetro Cellarsで使うためのPetite Sirahプティ・シラーを新たに植えた場所にも隣接しています。
Frank Vineyard
この畑は自社畑ではなく、
Harry Frank Vineyardが保有する畑を長期リース契約しダン・ヴィンヤーズで管理しています。畑の面積は6.5エーカーでカベルネ・ソーヴィニョンが植えられています。
Park Muscatine Vineyard
1890年代にPetite Sirahプティ・シラーが植えられた4エーカーの畑で、1980年代にリッジ・ヴィンヤーズが所有していました。息子MikeがPetite Sirahプティ・シラーを使ってRetro Cellarsを運営しており、その供給源にもなっていました。
Eagle Summit Vineyard
Josh Clarkが運営するワイナリーSaunter Winesがかつて保有していた標高2,100フィートの6.5エーカーの畑で、カベルネ・ソーヴィニョンが植えられています。2018年にダン・ヴィンヤーズが購入しました。
リリースワイン一覧
Dunn Cabernet Sauvignon Howell Mountain
ハウエル・マウンテンは火山灰と時折混ざり合う赤い石質の水捌けが良い土壌が特徴です。
ハウエル・マウンテンとナパバレーを区別できるようにハウエル・マウンテンのコルクはワックスで固められています。
※ハウエル・マウンテン産のブドウのみ使用。
Dunn Cabernet Sauvignon Napa Valley
ハウエル・マウンテンのブドウと15%未満の購入したナパバレーのブドウがブレンドされています。ハウエル・マウンテンと比べてタンニンが柔らかいという特徴があり、若いヴィンテージからでも楽しめるタイプのワインに仕上げられています。ハウエル・マウンテンよりも少ない1,500ケース程度の生産量となっています。
Dunn Cabernet Sauvignon Trailer Vineyard
この畑はダン・ヴィンヤーズが1978年に最初に購入した畑で、元々カベルネ・ソーヴィニョンが植えられていました。
他のワインで使うブドウよりも少し熟したブドウを使い、他のワインで施すアルコール低減作業を行わずに造られます。2012年と2013年の2ヴィンテージのみ。
※元々カベルネ・ソーヴィニョンが植えられていたものを2013年の収穫後に植え替えました。
Randy Dunnとダン・ヴィンヤーズの現在
濃厚でアルコール度数の高いワインを造らないよう14度未満のワイン造りにこだわり、ボルドーブレンドよりも純粋な100%カベルネ・ソーヴィニョンのみを愛し、品質維持を守るため生産量を制限するダン・ヴィンヤーズは桁違いの長期熟成能力を有するワインを造り出し、ナパバレーワイン産業の発展に大きく貢献してきました。
今日、長男Mikeがワインの生産を監督しブドウ畑のチームと協力して全体的な運営を管理しています。また、次女Kristinaがダン・ヴィンヤーズのマーケティングを担当しています。
ダン・ヴィンヤーズではいつ新しい世代に継承されても万全な体制ではありますが、創設者Randy Dunnはまだまだ現役でいるようです。
テイスティング・レポート
Dunn Cabernet Sauvignon Howell Mountain 1999 vs Napa Valley 1994
2020年5月25日
Dunn Cabernet Sauvignon Howell Mountain 1999はブラックベリーやブラックチェリーの香りから始まり、スパイシーさと土のニュアンスが取れる。
味わいは甘みは非常にソフトで酸味はシッカリとあり、苦味は熟成から溶け込んでいるが、元々はシッカリしていたのではないかと推察。ダン・ヴィンヤーズのポリシーにある通り濃縮したアルコール度数の高いワインには仕上げず、甘みは控えめで酸味がシッカリとしたエレガントなカベルネ・ソーヴィニョンで素晴らしかったです!
Dunn Cabernet Sauvignon Napa Valley 1994はブラックチェリーや干しプラムの甘い香りから始まり、カカオや土のニュアンスが取れる。味わいは意外にも甘みは非常にソフトで酸味はシッカリとあり、苦味はこのヴィンテージ(26年熟成)でも力強い。
ハウエル・マウンテンとの大きな違いは香りに果実の甘みがあるところ。味わいはいずれも甘みが控えめで酸味がシッカリとしたエレガントな仕上がりでした。
当編集部ではいずれもカリフォルニア・カベルネ・ソーヴィニョンの中で超ハイレベルな評価を致しましたが特にフラッグシップであるハウエル・マウンテンは別格の美味さでした。素晴らしい!
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