1996年にカリフォルニアワイン産地で最も涼しい地域の1つソノマ郡Russian River Valley AVAから、世界クラスのブルゴーニュスタイルのピノノワールとシャルドネを生産する事を目的に設立されたDuMOLデュモルの歴史と功績をご紹介します。
デュモルについて
カリフォルニア大学デービス校で教育を受けたワインメーカーHenryk “Max” Danillo-Gasiewiczは、1980年代に有名なバレル(樽)メーカーTonnellerie Radouxで職務に従事し、1990年代にソノマ郡Santa RosaのワイナリーDeLoach Vineyardsで経験を積みました。
1996年にHenryk “Max” Danillo-Gasiewicz はソノマの有名なブドウ栽培家Warren DuttonのWiddoes RanchとJewel Ranchから5トンのブドウを仕入れ、個人的にワインを造っていました。この個人的なプロジェクトはHenryk “Max” Danillo-Gasiewicz の2人の子供DuncanとMollyの名前からDuMOLデュモルと名付けられ、ソノマ郡のRussian River Valleyから並外れた品質のピノノワールとシャルドネを生産する事を目的としていました。
このデュモル事業には2人の投資家
Kerry MurphyとMichael Verlanderが参画しました。
タイヤ事業を営むEast BayのビジネスマンKerry Murphyは、1987年に自身の会社Murphy’s IncをThe Goodyear Tire & Rubber Companyへ売却し、引退すると本格的にデュモルへ参画します。
また、サンフランシスコ・ベイエリアのWalnut CreekでPrima Restaurantを経営しているMichael Verlanderはレストラン経営と並行しながらデュモルへ参画します。
Kerry MurphyとMichael Verlanderは1990年にKerry MurphyがMichael Verlanderの経営するPrima Restaurantで食事をしている時に出会います。
※Michael Verlanderは2005年にPrima Restaurantを売却します。
ワインはナパバレーOak Knoll RoadにあるLaird Family Estateが保有する最先端のワイナリー施設を間借りして造られていました。デュモルのファーストヴィンテージ1996と翌年の1997をリリースすると、2002年3月18日に創業者のHenryk “Max” Danillo-Gasiewicz は43歳の若さで亡くなりました。
デュモルの柱を失ったKerry MurphyとMichael Verlanderは協力して戦略を練り直し、Kerry Murphyは事業及びマーケティング業務を指揮し、Michael Verlanderはブドウ栽培及び醸造活動を監督する事にしました。
その結果、1998年ヴィンテージの生産にMerry Edwards(Merry Edwards Wineryの創設者)をサポートとして招き、1999年からはPaul Hobbs(Paul Hobbs Wineryの創設者)をデュモルのコンサルタントとして迎え入れました。Paul Hobbsの助言を受け、デュモルは畑を拡張していきます。
ワインメーカーAndy Smithの参画で勢いに乗るデュモル
2000年になるとデュモルの
ワインメーカーとしてAndy Smithを迎え入れます。
Andy Smithはスコットランド出身で地元エジンバラのワインショップで働き、新婚旅行でナパバレーを訪れた際にワイン業界に携わりたいと思うようになりました。
その後、ニュージーランドへ渡り、リンカーン大学でブドウ栽培と醸造学を学ぶと、ニュージーランドのDry River Wines、オーストラリアのMt Pleasant wineries、ソノマのLittorai Wines等で経験を積みました。
そして、かの有名なソノマ郡のPaul Hobbs Wineryでアシスタントワインメーカーを務め、Paul Hobbsの1999年ヴィンテージをリリースするとデュモルへ移籍し、ワインメーカーの職につきます。
※正式には2001年1月1日付でワインメーカーとなりました。
デュモルはこれまで買いブドウでワインを造っていましたが、2003年になるとロシアンリバーバレーのグリーンバレーに土地を購入し、自社畑を保有します。これにより、8,500ケースだった生産量が12,000ケースにまで拡大します。2005年になるとワインメーカーのAndy Smithがデュモルの経営パートナーとしても参画するようになります。
2007年にグリーンバレーとソノマコーストの間にある海岸の影響を受けやすい標高の高い土地Jentoft Vineyardにブドウを植え、更にブドウの幅を広げていきます。そして、2008年の初めからソノマ郡WindsorのConde Business Parkという新たに建設された工業団地に、19,600平方フィートのワイナリーの建設を着工します。
2011年にホワイトハウスにて中国の胡錦濤国家主席を迎えたオバマ大統領の夕食会で、DuMOL Chardonnay Russian River 2008が振舞われました。
料理はPoached Maine Lobster Orange Glazed Carrots and Black Trumpet Mushroomsポーチドメインロブスター、オレンジグレーズドキャロットとブラックトランペットマッシュルームとマリアージュされました。
デュモルではこれまで、ブルゴーニュスタイルのピノノワールとシャルドネを中心にワイン造りを行っていましたが、
2014年からナパバレーのCoombsvilleのRewa VineyardsとSpring MountainのBallard Vineyard等のブドウを購入しカベルネ・ソーヴィニョンを造り始めました。
Spring Mountainの山頂にある、鉄分の多い赤い火山性土壌に植えられたBallard Vineyardは、複雑で土とハーブの香りを持つ濃い黒系果実を生み出します。また、涼しいCoombsvilleの白い火山灰の上に植えられたRewa Vineyardsは、しなやかで豊かな質感を生み出します。
デュモルではこの2つの畑のカベルネ・ソーヴィニョンをブレンドして造られます。
2015年には近くのMarshall Ranchに土地を購入し、10エーカーのピノノワールを植え、Estate Vineyardを拡大します。
DuMOL Vineyard Map & Lineup
デュモルでは互換性のあるさまざまな畑のブドウをブレンドし、必要な時にのみ単一畑ワインを生産しています。その為、Green ValleyのCharles Heintz、Los CarnerosのLarry Hyde、Russian River ValleyのKent Ritchie等、数多くの有名な生産者からブドウを購入しています。
ワインはピノノワールとシャルドネが中心となりますが、シラー、ヴィオニエ、カベルネ・ソーヴィニョンも生産しています。以下にデュモルの管理する各畑をご紹介します。
このように数多くの畑から調達したブドウをブレンドして造られるデュモルのワインは現在、50種類以上にも及びます。
ピノノワールに関してはRussian River ValleyとEstate Vineyardに加えてRyan、Aidan、Eoin、Finnの4つのワインがあり、それぞれ複数の畑から調達したブドウをブレンドしています。また、ブレンドする畑の組み合わせも年代によって変わる場合もあります。Ryan、Aidan、Eoin、Finnは関係者の家族(男性)の名前です。
Pinot Noirピノノワール
Finnファン
2000年にラインナップとして加わりました。当初はWiddoes VineyardとOccidental Road Vineyardからのブレンドで造られていましたが、現在はEstate VineyardとOccidental Road Vineyardのブレンドで造られています。Andy Smithの息子にちなんで名付けられました。
Ryanライアン
2002年にラインナップとして加わりました。Widdoes VineyardとJewell Vineyardからのブレンドで造られていましたが、Widdoes Vineyard Ryanとなり、Widdoes Vineyardのブドウ100%で造られるようになりました。現在は、Jentoft Vineyard Ryanとなり100%Dutton Ranch Jentoft Vineyardのブドウで造られています。
Aidanアイダン
2004年にラインナップとして加わりました。グリーンバレーの西側にある2つのブドウ園Wildrose Estate VineyardとSundawg Vineyardのブドウで造られています。現在はWildrose Estate Pinot Noirという名称に変更され、100%Wildrose Estateのブドウから造られています。
Eoinオーエン
Sonoma Stage Vineyardのブドウ100%で造られます。サンパブロ湾からの影響を強く受けるSonoma Stage Vineyardは風が強く冷涼な気候である為、毎年ワインが造られるわけではなく条件の良い年のみ造られるワインです。
Connorコナー
Joy Road Vineyardからのブドウ100%で造られます。この畑は太平洋岸から約4マイル離れた標高1,000フィートの海岸地帯にあり、ミネラリーで透明感のあるワインを実現します。
シャルドネに関してはEstate Vineyardに加えてIsobel、Chloe、Clareの3つのワインがあります。Isobel、Chloe、Clareは関係者の家族(女性)の名前です。
Chardonnayシャルドネ
Isobelイソベル
太平洋からわずか6マイルのオクシデンタルリッジの高地にあるイソベルは、Heintz Vineyardが所有する畑でデュモルが指定した区画で栽培されたブドウを購入しています。IsobelはワインメーカーAndy Smithの娘の名前にちなんで名付けられました。
Chloeクロエ
当初はOccidental Road Vineyardのブドウで造られていましたが、Ritchie VineyardやDutton Vineyard、Searby Vineyard、Lorenzo Vineyardのブドウで造られる年もあります。ミネラル感が強いワインに仕上がる特徴があります。
Clareクレア
2002年以来提携しているHyde Vineyardsのブドウを100%使用して造られます。Hyde Vineyardsは1979年にLarry HydeがCarnerosで設立した高品質なブドウを栽培する事で定評のあるワイナリーです。
デュモルではヴィオニエにも家族(又は関係者)の名前が付けられたワインがあります。Liaは関係者の家族(女性)の名前です。
Viognierヴィオニエ
Liaリア
2002年にHoppe-Kelly Vineyardを中心にTrenton Station VineyardやDuMOL GVR Estate、Tinmbervine Ranch等のブドウをブレンドして造られるデュモルのヴィオニエはミネラル感豊富な特徴を持ちます。
デュモルがこれまでにリリースした全ワインの一覧はこちら
▶ Wines from DuMOL, Russian River Valley & Sonoma Wines
近年のデュモル
2015年にデュモルの創設者兼CEOであるKerry Murphyは、同じ創設者であるMichael Verlanderからデュモルの所有権を全て買い取ります。
これによりワインメーカーAndy SmithとセールスディレクターTom Pillsburyの役割を拡大できるようになります。
世界的に有名なワイン評論家ロバートパーカーは「世界で最も影響力のあるワインコンサルタント」としてHelen Turley、Mark Aubert、Michel Rolland、Paul Hobbs等の国際的に高い評価を受けている人物に加えて、Andy Smithを挙げており、この先もデュモルにとって必要不可欠な人材である事は明白です。
2001年のAndy Smith参画によって更なる躍進を遂げたデュモルは、創業以来、「グリーンバレーのブドウ畑」と「ブレンドワイン」に重点を置いてきました。
現在、ソナマ郡とナパ郡の28のブドウ園と協力し、55エーカーのエステートのブドウ園を中心にAndy Smith主導のもと、チーム一丸となって高品質なワイン造りを進めています。
テイスティング・レポート
DuMOL Isobel Chardonnay Sonoma Coast 2015 vs Chloe Chardonnay Russian River Valley 2015
2020年6月8日
DuMOL Isobel Chardonnay Sonoma Coast 2015
チャールズ・ハインツ・ヴィンヤードのブドウから造られるIsobel 2015。
香りは柑橘類、グレープフルーツ、レモンクリームの中に蜂蜜や若干のトースト、スパイス(白胡椒)のニュアンスが取れる。味わいは甘みはソフトで、酸味は爽やか。苦味はややシッカリと感じられ、コクを与える。全体的にミネラル感が強い仕上がりになっている。
DuMOL Chloe Chardonnay Russian River Valley 2015
リッチー・ヴィンヤードとロレンツォ・ヴィンヤードのブドウをブレンドして造られるChloe 2015。香りは洋ナシ、白桃の中にアーモンドやトーストのニュアンスが取れる。味わいは甘みはソフトで、酸味は爽やか。苦味は穏やか。香りからはミネラル感がそれほど強い印象を受けないのだが、苦味が少なく、酸味がシッカリあるのでバランス良くまとまっている。
当編集部では甲乙つけがたいがDuMOL Isobel Chardonnay Sonoma Coast 2015の評価が高かった。
DuMOL Finn 2001 vs Ryan 2005 vs Aidan 2006 vs Eoin 2012
2020年6月12日
DuMOL Finn Pinot Noir Russian River Valley 2001
イチゴやラズベリーのような赤系果実の香りの中にスモーキーでややスパイシーなニュアンスが取れる。甘みはまろやか、酸味はなめらか、タンニンは比較的シッカリとしている。
DuMOL Ryan Pinot Noir Russian River Valley 2005
イチゴやラズベリーの他にプラムの香りも取れる。次に紅茶や赤スグリのニュアンスもある。甘みはまろやか、酸味はなめらか、タンニンはサラサラとしている。
DuMOL Aidan Pinot Noir Russian River Valley 2006
ラズベリーのような赤系果実の他にブルーベリーのような黒系果実のニュアンスも若干取れる。次にバラの花びらやなめし革のニュアンスも取れる。味わいは甘みが強く酸味はなめらか、タンニンは緻密。
DuMOL Eoin Pinot Noir Sonoma Coast 2012
ラズベリーのような赤系果実の他にブルーベリーのような黒系果実のニュアンスも若干取れる。次にバラやスミレのようなニュアンスも取れる。甘みはまろやか、酸味はなめらか、タンニンは比較的シッカリとしている。
ピノノワール4種の中で印象的だったのは玄人向けのFinnと万人向けのRyanでした。
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