Dominus Estateドミナス・エステートはフランス・ボルドー地方(右岸)の著名な生産者Jean-Pierre Moueix社を実家に持つChristian Moueixが何世紀にもわたるボルドーの伝統と、ナパバレーの恵まれたテロワールを融合して表現したナパバレートップクラスのワイナリーです。父Jean Pierre Moueixはボルドーの右岸の発展に大きく貢献した人物で、特にボルドー・右岸の頂点Chateau Petrusシャトー・ペトリュスを世界最高レベルにまで育てたオーナーとしても有名です。
ドミナス・エステートについて
パリで農業工学の研究を終えた後、1968年にフランス人ワイン関係者では珍しくカリフォルニア大学デイヴィス校(大学院)に在籍していたChristian Moueixは、ナパバレーとそこで造られたワインに夢中になりました。
Christian Moueixの実家はフランスのJean-Pierre Moueix社で、数々のシャトーを経営しており、特にボルドー・右岸の発展に大きく貢献した人物です。なかでも父Jean-Pierre Moueixはシャトー・ペトリュスを買収し、世界の頂点に育て上げた伝説の人物です。
1970年にChristian Moueixは故郷へ戻り、Chateaux Petrus, La Fleur-Petrus, Trotanoyの経営に参画しました。
その後もChristian Moueixのナパバレーに対する熱は冷める事は無く、1981年にナパバレーYountvilleのNapanook Vineyardにある124エーカーの歴史ある畑を見つけました。
この畑は1946年にInglenook WineryのオーナーJohn Daniel Jr.が購入した土地で1970年に死去した後、娘のRobin LailとMarcia Smithに引き渡された土地でした。そして、翌年1982年にRobert Mondaviの勧めもありChristian Moueixは畑の所有者であるRobin Lail、Marcia Smithとパートナシップを締結し、共同所有者となりました。また、このプロジェクトにはテロワールへの献身を誓ってラテン語で「主」を意味するDominusの名を付けました。
ドミナス・エステートのモットーは「Napa terroir Bordeaux Spirit ナパのテロワールでボルドーの精神!」と言われる程その土地のテロワールを重要視します。
この事からドミナスでは、ドライファーミングという栽培方法が採用されています。これは敢えてブドウに水を与えないで、根が水分を求め地中深く伸びていく事でテロワールの特徴を存分に有したブドウにするという方法です。
また、カリフォルニアで貴重な資源である水を節約するため、環境に優しい持続可能な栽培方法でもあります。
最初のヴィンテージは1983年で、ワイナリーが完成するまで近くのRombauer Wineryでワインを造っていました。微調整を繰り返し、ワインの品質とスタイルに満足できるようになったのは1980年代後半頃でした。
1990年、1991年、1992年のヴィンテージではロバートパーカー監修ワインアドヴォケイト誌でも高評価を得られるようになりました。
そして、1995年にChristian MoueixはRobin LailとMarcia Smithから、残りの土地の所有権を買い取り完全な所有者となりました。
勢いが止まらないドミナス・エステート
1996年にドミナス・エステート第2弾となるNapa Nookをリリース。ドミナスと同じナパヌックの畑のブドウを使用しますが、日当たりの良い側の畑と比較的新しい畑から収穫されたブドウで造られ、お手頃な価格で高い満足度が得られるように造られた、早期熟成早飲みタイプのセカンド的なワインです。
1997年には元アートディーラーであった中国系アメリカ人の妻Cherise Chenが協力して、総費用500万ドル、広さ50,000sq ft(4,600㎡) のワイナリーを建設します。
世界的に有名な最先端のスイスの建築家Jacques HerzongとPierre de Meuron(ロンドン・テート・ギャラリー、北京夏季オリンピックスタジアムを設計した人物)によって設計されたワイナリーはテロワールの重要性を尊重してコンクリートの壁の代わりに、地元産の玄武岩の岩で満たされた蛇籠で自然環境に溶け込み、自然光を遮る事で非常に暑い夏の日には断熱効果を発揮します。
同じく1997年にChristian Moueixはシャトー・ペトリュスの
Jean-Claude Berrouetをワインメーカーとして招き、ワインは遥かにしなやかで且つ複雑さを持つものに改善されました。
2000年1月1日にはMaisons Marques & Domainesとの提携を開始します。Christian MoueixはマーケティングをMaisons Marques & Domainesに全任する事で自身がワイン造りに専念できると考えたのです。
Maisons Marques & Domaines USA Inc.はフランス・シャンパーニュ地方のLouis RoedererとそのカリフォルニアワイナリーであるRoederer Estateのアメリカでの販売およびマーケティング部門として1987年に設立されました。
今日、Maisons Marques & DomainesはアメリカはMerry Edwards Winery、Diamond Creek Vineyards、フランスは Chateau Pichon-Longueville Comtesse de Lalande、Chateau de Pez等数多くのワイナリーと提携しています。
2007年には、ブドウ栽培とワイン醸造のディレクターとしてTod Mosteroを招きました。Tod Mosteroは南カリフォルニア出身でボルドー大学でワイン学の修士号を取得。Chateau Haut Brion、Chateau Petrus、Domaine de la Romanee-Conti、Opus One等の超一流ワイナリーで経験を積んだ経歴の持ち主です。
一連の体制強化から、Dominus Estate 2010でついにロバートパーカー監修ワインアドヴォケイト誌にて100点満点を獲得したのです。
Dominus、Napanook以外にも続々とリリース!
2006年にサード的な位置付けのOthelloをリリース。これはドミナス・エステートと同じヨントヴィルの自社畑の区画違いの若樹から収穫したブドウを使用しており、セカンド的な位置付けであるNapanookよりも更に早くから楽しめるワインに仕上がっています。
2008年にはUlysses Vineyardを取得しました。マヤカマス山脈の麓にあるナパバレーは、オークヴィルに位置し、かつてはCharles Hopper Ranchと呼ばれていた畑でした。その後、Schmidt Ranchという名前に代わり、Schmidt RanchではブドウをSwanson Vineyardsへ販売していました。
この土地はドミナス・エステートから近く、Christian Moueixが自転車で通り、Napanookの水捌けの良い西部に似た土壌である事に気付き目を付けていた土地であると言われています。Ulysses Vineyardの取得によりオークヴィルでの新たな挑戦が始まりました。
2009年にはCarpe Diem Cabernet Sauvignonをリリースします。Carpe Diemは同じMaisons Marques & Domaines傘下のブランドで、ピノノワールとシャルドネはメンドシーノ郡アンダーソンバレーのブドウから
、カベルネソー・ヴィニヨンはナパ郡ナパバレーのブドウから造られます。
ピノノワールとシャルドネはRoedererのワイン醸造チームが担当し、カベルネ・ソーヴィニョンはChristian Moueix率いるドミナス・エステートの醸造チームが担当しています。
Dominus Proprietary Red
ドミナス・エステートのフラッグシップで1983年がファーストヴィンテージ。マヤカマス山脈の麓に位置するブドウ畑はサンパブロ湾からの涼しいそよ風によって気温が緩和され、エレガントなスタイルのワイン造りを実現します。また、火山性の水捌けの良い土壌はボルドー品種の栽培に特に適しており、20~25年の熟成に耐え得るワインを造りだします。
Dominus labels
1983年から1990年までは、まだ独自のアイデンティティを持っていなかったため、ラベルにはChristian Moueixの肖像画をアーティストに依頼する形で描かれていましたが、1991年ヴィンテージからはクラシックなボルドースタイルのラベルがアーティストシリーズに取って代わりました。
2010年、2013年、2015年、2016年にロバートパーカー監修ワインアドヴォケイト誌にて100点満点を獲得。
Dominus Napanook Proprietary Red
ドミナス・エステートのフラッグシップDominus Proprietary Redと同じNapanook Vineyardの日当たりの良い側の畑と比較的新しい畑から収穫されたブドウで造られます。
早期熟成の早飲みタイプでセカンド的な位置付けです。若々しく活気に満ちたスタイルはカジュアルなシーンにマッチします。ファーストヴィンテージは1996年。
Othello
ドミナス・エステートのフラッグシップ
Dominus Proprietary Redのサード的な位置付け。これはドミナス・エステートと同じYountvilleの自社畑の区画違いの若樹から収穫したブドウのみを使用しており、Napanookよりも更に早くから楽しめるワインに仕上がっています。
2006年がファーストヴィンテージで、カベルネ・ソーヴィニョン、カベルネ・フラン、プティヴェルドのブレンド。
Ulysses Vineyard
マヤカマス山脈の麓にある
ナパバレー・オークヴィルに位置するこの畑は、ドミナス・エステートのNapanook Vineyardから近く、土壌の性質も似ていた事から2008年にChristian Moueixが取得しました。
Yountvilleの隣であるOakvilleでの新たな挑戦になります。古代ギリシャ時代、戦いのために旅立つも、最終的には困難な試練をすべて乗り越え、ついに10年の長い苦しみの末、帰路にたどり着くユリシーズの神話に感銘を受けた事から名付けられました。
Carpe Diem Cabernet Sauvignon
Maisons Marques & Domaines傘下のブランドで、シャルドネとピノノワールはメンドシーノ郡アンダーソンバレーのブドウを使い、Roedererの醸造チームによって造られ、カベルネ・ソーヴィニョンはナパバレーのドミナス・エステートのブドウを使ってドミナス醸造チームにより2009年から造られています。
ワインを新鮮で活気のある状態に保つため新樽比率は極めて低く設定されています。
Christian MoueixとDominus Estateが獲得した輝かしい受賞歴
2008年にニューヨーク市James Beard FoundationからLegend of Wineを受賞しました。この賞は、毎年James Beardの5月5日の誕生日に行われ、シェフ、レストラン経営者、著者、ジャーナリストを表彰するものです。
また、同年に世界90ヶ国以上で愛読されるイギリスのワイン雑誌Decanterにて、Christian MoueixがMan of the Yearに選ばれました。この賞はその年の素晴らしいワインメーカーに贈られる名誉ある賞です。
同じく2008年にはドミナス・エステートがTastingbook.com主催のBest Wine of the Worldに選ばれました。これはワイン消費者とワイン専門家による投票形式で50のワインを決め、第2フェーズでは専門家によるブラインドテイスティングで評価を決めます。
Tastingbook.comは世界中の何千人ものワイン専門家やワイナリーから信頼されている世界最大のワイン情報プラットフォームです。
2011年にはWine Spectator誌から
Distinguished Service Awardを受賞します。Wine Spectatorはワイン業界に多大且つ長期にわたって貢献してきた個人に、Distinguished Service Awardを贈ります。多くはワイナリーのオーナー、ワインメーカー、ブドウ栽培者です。
この雑誌は主にワインの評価(100点満点方式)とテイスティングノートで構成されています。
2016年にはThe Somm JournalでChristian Moueixの特集が組まれました。The Somm Journalは2008年にソムリエをはじめとするレストランおよびワイン業界向けに創刊されたアメリカの権威ある業界紙です。
ドミナス・エステートとChristian Moueixのその後
Christian Moueixは2017年にボルドー右岸のClos La MadeleineとChateau Magnan La Gaffeliereを取得しました。まだまだボルドー右岸の発展に力を注ぐようです。
Christian Moueixには2人の子供が居ます。EdouardはChristian Moueixの会社Ets Jean-Pierre Moueixのゼネラルマネージャーを務めます。
Charlotteは南アフリカの野生動物獣医師として活躍。また、妻のCheriseはドミナス・エステートのクリエイティブディレクターを務めています。
2019年にワインビジネスで50周年を迎えたChristian Moueixは2020年現在74歳です。それでも未だワインビジネスには意欲的です。
テイスティング・レポート
Dominus 1998 vs Napanook 2006 vs Othello 2006
2020年4月14日
3種とも同じ畑でファースト、セカンド、サード的な位置付けを飲み比べます。ヴィンテージの選定も各ワインの飲み頃に合わせて選定。
Dominus 1998
熟したブラックベリー、干しプラムの香りから始まり、次にダークチョコレートのニュアンスが現れる。
ややスパイシーで葉巻や枯れ葉のニュアンスが多少感じられる。甘みはソフトで酸味は滑らか。タンニンはこのヴィンテージにしてはシッカリとしている。玄人向けの印象。
Napanook 2006
熟したブラックベリー、干しプラムの香りから始まり、次にカカオやココアの香りが感じ取れる。
ややメントールやミントのニュアンスも取れる。甘みはソフトで酸味は生き生きとしてシッカリ残っている。タンニンにはカベルネ・ソーヴィニョン特有の収斂性がある。
Othello 2006
ラズベリー、ブラックベリーの香りから始まり、次に強いカカオやココアの香りが感じられる。甘みはソフトで新鮮な酸が印象的。タンニンには収斂性が感じられる。
この3つのテイスティングを通して、サード的な位置付けのOthelloが最もバランスが良く一般受けしそうな印象を受けました。Dominusは格上感があり、その複雑性からかなり玄人向け。Napanookはセカンド的な位置付けではありますがコスパの良いワインと判断できそうです。
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