ナパバレー・セントヘレナの標高1,100~1,400フィートに位置するプリチャード・ヒルで後にロバート・パーカー監修ワインアドヴォケイト誌の評価100点満点を16度も獲得する程の高品質なボルドーブレンドを造りだすナパバレーのカルトワイナリーColgin Cellarsコルギン・セラーズの歴史と功績をご紹介します。
コルギン・セラーズについて
テキサス州ウェーコで生まれ育った
Ann Colginアン・コルギンはテネシー州 ナッシュビルのヴァンダービルト大学で美術史の学位を取得し、ニューヨーク大学でMaster of Artsの修士号を取得した後、国際的なオークション会社Sotheby’sとChristie’sで働きます。
Ann ColginはSotheby’sで勤務している間、多くのワインの試飲会に参加しました。これまでアルコールはビールとカクテルが中心だったAnn Colginは、五大シャトーのシャトーラトゥール1961年を飲んだ際、強く感銘を受け、ワインの世界にのめり込んでいきました。
その後、1988年にChristie’sのBrian Coleに招かれてナパバレー・ワインオークションに参加し、当時古物商だった夫Fred Schraderと共に本格的にワインへの関心を高めていきます。
ある時Ann ColginがナパバレーのカリストガにあるワインショップAll Seasons Wine Shopで買い物をしている時に、当時店員だったJohn Wetlauferと知り合いました。
このJohn Wetlauferという人物の妻はPeter Michael WineryやBryant Family Vineyardを手掛けたアメリカトップワインメーカー及びディレクターのHelen Turleyヘレン・ターリーだったのです。
John WetlauferがAnn Colginに妻Helen Turleyを紹介した事で話は進み、Ann Colginは夫Fred Schraderと共にColgin-Schrader Cellarsを設立します。
もちろんワインメーカーはHelen Turleyです。Ann Colginはまた、ブドウ畑のマネージャーとしてDavid Abreuを迎え入れます。Helen TurleyはAnn ColginにハウエルマウンテンAVAの斜面のすぐ下にある、小さなHerb Lambが所有する畑Lamb Vineyardを紹介します。
こうしてコルギン・セラーズはLamb Vineyardから購入したブドウでワインの生産を開始しました。
最初のリリースは1992年でColgin-Schrader Cellarsという名前で販売されました。
ファーストヴィンテージから評判が良く、サードヴィンテージである1994年がリリースされる頃にはナパ・カルトワインの新メンバーとしての地位を確立していきました。
実際、Colgin Cabernet Sauvignon Herb Lamb Vineyard 1994はオークションでボトル1本あたり1,000ドルを超える値が付きました。
一方、最初のリリースのすぐ後にAnn Colginは夫Fred Schraderと離婚します。これによりAnn ColginはColgin-Schrader CellarsをColgin Cellarsとして続けます。
そして、夫Fred Schraderは後にナパバレーのウルトラ・プレミアムと称賛される自身のブランドSchrader Cellarsを設立します。
勢いに乗るコルギン・セラーズ
1997年になるとコルギン・セラーズはセントヘレナにあるTychson Hills Vineyardを所有します。
この場所は1881年にナパバレーで最初の女性ワイン生産者となったJosephine Tychsonによってブドウが植えられた歴史ある土地でした。
コルギン・セラーズはこの土地でのブドウ栽培の可能性と歴史的背景に惹かれ購入を決断しました。
Tychson Hills Vineyardは年月の経過によって老朽化しており、完全な植え替えが必要でした。
※当時Josephine TychsonはTychson Cellarsを設立。その後Lombarda Cellarsとなり、1939年にFreemark Abbeyが買収します。
1999年にコルギン・セラーズでは、ブドウ畑のマネージャーDavid Abreuが展開する自社ブランドAbreu Vineyardsが管理する3つのブドウ畑(Madrona Ranch、Thorevilos、Howell Mountain)からブレンドされたボルドースタイル
Colgin Cariad Proprietary Red Wineをリリースし、コルギン・セラーズのラインナップを拡充します。
ちょうどこの年にHelen Turleyの後任にMark Aubertをワインメーカーとして迎え入れます。
Mark Aubertはピーター・マイケル・ワイナリーで同じくHelen Turleyの後任としてワインメーカーを務めた実力派です。また、自身のブランドAubert Winesの創設者でもあります。
Ann Colginは伝説的なブルゴーニュのプロデューサーHenri Jayerアンリ・ジャイエを称えるビバリーヒルズでのディナーイベントで、現在の夫
Joe Wenderジョー・ウェンダーと出会います。
Joe Wenderは元ゴールドマンサックスのシニアアドバイザーという経歴を持ち、ワインへの強い関心が2人を結び付けました。
そして、1999年に2人の結婚を記念してナパバレー・セントヘレナのプリチャード・ヒルに120エーカーの土地を購入します。
この土地は1950年代からDonald Adams Longが900エーカー以上所有しており、「アメリカのワイン製造の父」と呼ばれるAndre Tchelistcheffのアドバイスでブドウを栽培していましたが、土地を分割していくつかのワイナリーに売却もしていました。
たまたまコルギン・セラーズに割り当てられた土地がパーセルナンバー9であった為、この土地をIXエステートと名付けました。
また、2人が結婚した日が9月9日である事から「9」という数字は縁起が良いと考えたようです。
この土地にはブドウ畑のマネージャーであるDavid Abreu主導で16エーカーのボルドー品種と4エーカーのシラーが植えられました。
2002年には海外への進出を果たします。Ann ColginとJoe Wenderはフランス・ブルゴーニュで1865年に設立された伝統あるMaison Camille Giroudを買収します。
近年Maison Camille Giroudは投資に必要な資金に困っていたと言われています。
また、同年にプリチャード・ヒルに取得した120エーカーのIXエステートに新ワイナリーを完成させます。丘の上からヘネシー湖を臨む見事な景観に馴染んだ円形デザインのワイナリーは、重力を利用してブドウやワインを移動させるGravity Flowシステムを採用しており、これによってブドウやワインに掛る負担が少なく、個性を引き出すワイン造りを実現しています。
2010年のオークション・ナパバレーでコルギン・セラーズは、これまでにリリースされたColgin Cariad Napa Valleyマグナムボトルを垂直で全ヴィンテージ(1999-2006)提供すると、250,000ドルという破格の値が付きました。
リリースワイン一覧
Colgin Cabernet Sauvignon Herb Lamb Vineyard
セントヘレナのハウエルマウンテンの麓にある小さなHerb Lamb(現在は妻Jennifer Lamb)が所有する畑Lamb Vineyardは標高600~800メートルで20~50%の勾配があり、岩だらけの土壌と砂利ローム土壌で非常に水捌けの良い畑です。
夕方の霧と朝のそよ風で非常に冷涼な気候の畑からは上質のブドウが収穫されます。
創業当初はこのHerb Lamb Vineyardから仕入れたブドウでワインを造っていました。ファーストヴィンテージは1992年。
Colgin Cabernet Sauvignon Tychson Hill Vineyard
1997年に取得したセントヘレナにあるTychson Hills Vineyardはナパバレーで最初の女性ワイン生産者であり、現在Freemark Abbeyとして知られるワイナリー創設者Josephine Tychsonが1881年に開拓した土地です。
ナパバレーで最も希少な火山性の土壌が含まれる東向きの岩だらけの斜面が特徴で、ブドウ畑は3つのブロックに分かれています。ファーストヴィンテージは2000年。
Colgin Cariad Proprietary Red Wine
ブドウ畑のマネージャーDavid AbreuがオーナーのセントヘレナにあるAbreu Vineyardsが管理する3つのブドウ畑
Madrona Ranch、Thorevilos、Howell Mountainからのブレンドで造られるボルドーブレンド(Cabernet Sauvignon、Merlot、Cabernet Franc、Petit Verdot)のワインです。ファーストヴィンテージは1999年。
「カリアド」という言葉はウェールズ語で愛を意味します。
Colgin IX Proprietary Red Estate
IXエステートヴィンヤードは海抜1,150~1,350フィートの標高に位置し、125エーカーの壮大な区画から切り分けられた20エーカーのブドウ畑です。
人里離れたセントヘレナのプリチャード・ヒルエリアからはヘネシー湖を一望できる景観を有し、岩だらけの火山性土壌からはナパバレーで最も高い値が付くブドウが収穫されます。ファーストヴィンテージは2002年。
Colgin IX Syrah Estate
IX Proprietary Red Estateと同じセントヘレナのプリチャード・ヒルエリアに位置するこの畑はシラーの名産地南フランス
ローヌ地方のCote-RotieとHermitageからのクローンで構成されています。
ブドウ畑は1エーカーの畑が4ブロックあり、それぞれ特徴が異なる為、別々に発酵され最も複雑味のある最高品質のブレンドに仕上げます。ファーストヴィンテージは2002年。
コルギン・セラーズの売却とその後
2017年にコルギン・セラーズは株式の60%をLVMHへ売却しました。
LVMHはKrug、Dom Perignon Champagne、Clos des Lambrays、Chateau d’YquemyやLouis Vuitton、GIVENCHY、FENDI等を傘下に収める世界最大のファッション業界大手企業体です。
この契約にはコルギン・セラーズのブランド、ワイナリー、ブドウ畑が含まれます。
Ann ColginとJoe Wenderは2人が亡くなった後もコルギン・セラーズが長年にわたって存続し、繁栄する事を心から願っています。
また、夫婦には子供が居なかった為、事業の後継者が居ません。このような事がコルギン・セラーズを売却した背景にあったのだと推察されます。
ただし、夫婦はまだ引退するつもりは無く、コルギン・セラーズの才能あるワイナリーチームはワインメーカーのAllison Tauzieと共にAnn ColginとJoe Wenderが引き続き率いていく事でコルギン・セラーズの伝統は生き続けます。
Allison Tauziet and Ann Colgin with Joe Wender
参照元:vinous.com
テイスティング・レポート
Colgin Cariad Proprietary Red Wine 1999 vs Colgin Cabernet Sauvignon Herb Lamb Vineyard 1994
2020年5月22日
Cariadは甘いブルーベリーの香りの中にカベルネ・ソーヴィニョン特有の杉や針葉樹の香りが取れる。ローストのニュアンスがあり、若干ではあるがコーヒーやカカオの印象もある。味わいは甘みは香りほど強くなく、ソフトで酸味はなめらか。タンニンはやや強め。
Herb Lambは熟成している事もあって干しプラムの香りが強く、その中に杉や針葉樹の香りが強く感じ取れる。ほんのりチョコレートのニュアンスがある。味わいは甘みはソフトで、1本細く芯の通った酸味が続く。苦味はこのヴィンテージだと溶け込んでいるが、もともとはシッカリしていたのだろうと推察。
26年の熟成にもかかわらずプラムの果実味がシッカリ感じられ、上品な酸味が続く非常に美味なワインでした。
当編集部では圧倒的にHerb Lambの評価が高くおすすめできます。2007年ヴィンテージが最後なので見つけたら買いですね。
Colgin IX Syrah Estate 2009
2020年5月23日
IX Syrah Estatは濃縮したブラックベリーの香りからスミレの強い香りが取れる。
その中に甘草や生肉、黒コショウのニュアンスも取れる。タバコやビターチョコレートのニュアンスも若干取れる。味わいは甘みはソフトで酸味は比較的シッカリしている。
タンニンは緻密。「スミレの強い香り」が特徴的なワインで、カリフォルニアのシラーの中では非常にハイレベルであると判断しました。
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