カリフォルニアの中で最も歴史のあるワイナリーChateau Montelena Wineryシャトー・モンテレーナ・ワイナリーは、1976年の歴史的大事件パリテイスティングで白ワイン部門の第1位を飾った事でも有名です。パリテイスティングで起きた出来事はあまりにも衝撃的だったため、後に映画「ボトル・ドリーム カリフォルニアワインの奇跡」としてリリースされました。
※原題:BOTTLE SHOCK。
この伝統と実績のあるシャトー・モンテレーナの魅力をテイスティング・レポートと合わせてお届けします。
シャトー・モンテレーナについて
※左:シャトー・モンテレーナ、右:シャトー・ラフィット
1933年に禁酒法が廃止されると、アルフレッド.L.タブスの孫であるChapin Tubbsチェーピン・タブスはブドウを収穫し、ワインを造り、他のワイナリーにブドウを販売する動きを再開しました。1940年にチェーピンはワイナリーの名前を、セントヘレナ山(Mount St. Helena)を短縮してモンテレーナ(Montelena)と名付け、Chateau Montelena Wineryシャトー・モンテレーナ・ワイナリーに改名しました。
1947年にチェーピンが亡くなってから2年後、ワイン造りは中止され、シャトー・モンテレーナは20年近くワイナリーとして機能しなくなりました。1958年には、引退後に暮らす平和な場所を探していた中国人夫妻ヨートとジーニー・フランクへ土地を売却しました。フランクは敷地内に人工池を造り、故郷の中国庭園を反映するように景観化しました。
歴史に残る大事件パリテイスティング
1976年、高級ワイン愛好家の殆どは、フランスに視線を注いでいました。
しかし、その当時パリでワインショップとワインスクールを経営していたイギリス人、スティーブン・スパリエは、アメリカのワイン関係者がパリを訪れた際、持参したカリフォルニアワインに興味をそそられました。
そこで、スパリエはカリフォルニアの赤(カベルネ・ソーヴィニヨン)と白(シャルドネ)のセレクションを、同じヴィンテージのボルドーとブルゴーニュで最も賞賛されたワインのいくつかと一緒にし、フランスでトップ批評家とされるグループの間でブラインド・テイスティングを実施し評価する企画を打ち立てました。その結果、赤部門では1973年のスタッグス・リープSLVカベルネ・ソーヴィニヨンが、シャトー・ムートン・ロスチャイルドやシャトー・オーブリオン等を押さえ勝利しました。
一方、白部門ではシャトー・モンテレーナ1973が、ドメーヌ・ルーロ・ムルソー・シャルムやジョセフ・ドルーアンのクロ・デ・ムーシュ等を押さえて勝利しました。
この事は世界中に広まり、フランス一強であったワイン産業においてカリフォルニアワインが見直されるきっかけとなりました。
当時、シャトー・モンテレーナをはじめとしたパリテイスティングにエントリーされたワインは即座に売り切れになったと言います。
栄誉をたたえ受賞ワインはそれぞれスミソニアン国立アメリカ歴史博物館に展示されました。そして、30年後、シャトー・モンテレーナは映画「ボトル・ドリーム カリフォルニアワインの奇跡(原題:BOTTLE SHOCK)」としてリリースされました。
世界的にその名が知れ渡ったシャトー・モンテレーナの躍進
長年、フランス・ボルドーレベルのワイン造りを夢見ていたシャトー・モンテレーナは、1978年にシャトー100周年を記念して、ついに自社畑(エステート)のカベルネ・ソーヴィニヨンをリリースします。エステートのブドウ園は、平らな山から急な山腹まで、さまざまな地形で構成されています。
古代に起きた海の沈下によって堆積した土壌を中心に外側の地域には火山性の土壌があり、この地形と土壌の多様性がワインの複雑なフレーバーを生み出しています。
シャトー・モンテレーナ売却の破断が大きな転機を与えた
2008年にジム・バレットは、シャトー・モンテレーナをフランス・ボルドーのシャトー・コス・デス・トゥルネルのオーナーであるミシェル・レイビエに売却する事を決めました。
ところが、ミシェル・レイビエが契約条件を満たせなかったため、契約から4ヶ月後にこの話は破談となりました。一説には景気悪化に伴い、1億ドルから1億5000万ドルとも言われる買収価格の調達が困難になったと言われています。シャトー・モンテレーナの所有者は改めてワイナリーを維持する決意を固めました。
2010年になるとボー・バレットが以前より申請を進めていたカリストガがAVAとして認定されます。
2013年には、シャトー・モンテレーナは、1888年にアルフレッド・タブスによって完成された石造りのワイナリーシャトーの歴史的認知を得て国立史跡に登録されました。国立史跡は、有名な1976年のパリテイスティングに関して、「バレット家の管理下で1970年代後半にシャトー・モンテレーナが、世界のワイン産業でナパバレーの評判を築く上で果たした非常に重要な歴史的出来事である」と賞賛しました。
ジム・バレット亡き後のシャトー・モンテレーナ
2013年3月14日ジム・バレットは86歳の年齢で亡くなりました。ボー・バレットは、マスター・ワインメーカー兼CEOとして留まります。
その際、ボー・バレットは次のような声明を発表しています。「これからもジム・バレットのヴィジョンに忠実にワイナリーを運営し続けます。シャトー・モンテレーナはこれからも引き継がれる事で存続し、明るい未来が待っています。」
現在、シャトー・モンテレーナはボー・バレットCEOを中心に彼の4人の兄弟、そして父の2番目の妻ジュディの6人が経営に関与しています。
シャトー・モンテレーナを中心にパリテイスティングが与えた影響は、フランス人だけが傑出したワインを造る事ができるという概念を終わらせた事であると言われています。
パリテイスティング後数年で、カリフォルニア、特にナパバレーのワインが顕著に成長した事は事実ですが、他の多くの国のワインメーカーを勇気づけて、輸出市場向けの高品質で上質なワインを生み出した事も事実です。
アメリカをはじめ、オーストラリア、ニュージーランド、チリ、アルゼンチン等、世界中で上質なワインが入手できるようになったのは、パリテイスティング後のワイン界の考え方が変化したことによるものです。
Chateau Montelena current release
現在、シャトー・モンテレーナでは、一般にはソーヴィニヨン・ブラン、リースリング、シャルドネ、カベルネ・ソーヴィニヨン、ジンファンデル、プティ・シラーの6種類をリリースしています。カベルネ・ソーヴィニヨンとジンファンデルは自社畑(エステート)で、その他は契約畑や買いブドウです。自社畑である事に拘るというよりもテロワールを重視するワイン造りをモットーとしているのです。
このマック・ファーデン・ヴィンヤードのブドウは品質が高く、他にもRobert Mondavi、Sterling、Beringer等もブドウを買い付けています。
これに加え、しばらくの間、中央海岸のサンタマリア地区からもブドウを購入していました。
現在では、カーネロスのすぐ北にあるオークノール地区(ドライ・クリーク・ロードの近くにあるマウント・ヴィーダーの麓の畑をリースで借りている)からシャルドネを入手しています。
こちらは自社畑の他にカリストガにある地元の畑から調達したブドウをブレンドします。
カリストガ・キュヴェの名称は2000年ヴィンテージからCabernet Sauvignon Napa Valleyへ変更されました。
現在はトファネッリ・ワイナリー(Tofanelli Winery)の古いブドウから、新しいエステートの植え付けまで、ジンファンデルを再定義しエチケット(ラベル)も刷新して販売しています。
トファネッリのブドウは品質が高く、Duckhorn、Turley、Spottswood、Schrader等も買い付けています。
参考動画 ※日本語字幕付き
【Chateau Montelena – YouTube】
テイスティング・レポート
シャトー・モンテレーナ白3種飲み比べ
2020年1月21日
Chateau Montelena Potter Valley Riesling 2016
(シャトー・モンテレーナ(モンテレーナ) リースリング ポッター・ヴァレー)
柑橘類の香りが強く青リンゴよりも洋ナシ寄り。粘性が強く、果実が成熟している事がよく分かる。
Chateau Montelena Sauvignon Blanc Napa Valley 2018
(シャトー・モンテレーナ ソーヴィニヨンブラン ナパヴァレー)
柑橘類の香りが強く青リンゴ、レモングラスのニュアンスが際立つ。
ニュージーランドのソーヴィニヨン・ブラン程パッションフルーツのニュアンスは強くない。
ソーヴィニヨン・ブラン独特のスイカズラ、貝殻のニュアンスはあるが、何よりも特徴的なのは粘性の強さ。果実が成熟している。
Chateau Montelena Chardonnay Napa Valley 2016
(シャトー・モンテレーナ シャルドネ ナパヴァレー)
洋ナシの印象が強く、樽が効いてヘーゼルナッツのニュアンスがハッキリ分かる。味わいは香りの印象とは対照的に甘みはソフトで、酸味はシッカリとしており、カリフォルニアのシャルドネとは思えぬ程エレガントなのが特徴的。
Chateau Montelena Calistoga Zinfandel 2015
2020年1月22日
外観は深みのあるガーネット。香りは凝縮感がありブラックベリーやブラックチェリーのニュアンスで樽が効いている。ややカカオのニュアンスも取れる。まろやかな甘みがあり、酸は滑らでタンニンはさほど強くない。それでも成熟度が高く、濃縮し、力強い印象を受ける。
Chateau Montelena Cabernet Sauvignon Napa Valley 1996
2020年1月22日
熟したブラックベリー、プラム、タバコのニュアンスが取れるが、最も特徴的なのは針葉樹の強い香り。
若干のスパイスも取れる。味わいは甘みがソフトで酸は滑らかだが意外とシッカリしている。カベルネ・ソーヴィニヨン特有の強いタンニンは熟成によって溶け込んでいるよう。
長期熟成型と言われるだけあって、このヴィンテージでもまだまだ熟成可能である事は容易に想像がつく。
おそらく30年強位は熟成によって美味くなるだろう。見事でした!
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