ワイナリー 2021.04.02
2021.04.30
林 亨(はやし りょう)
Beaulieu Vineyard
1900年代初頭にGeorges de Latourによってナパバレー・ラザフォードに設立され、ナパバレーの歴史の中で最も影響力のあるワインメーカーAndre Tchelistcheffによって不動の地位を築き上げた歴史あるBeaulieu Vineyardボーリュー・ヴィンヤードの辿った栄光の軌跡をご紹介します。
ボーリュー・ヴィンヤードについて
Georges de Latour はフランス・ドルドーニュ地方出身の化学者で、1883年にカリフォルニアに移り住み、1890年代初頭にサンノゼに定住しました。1900年になると妻の
Fernande と一緒にナパバレーに移り住む事になりました。
Georges de LatourはラザフォードにあるInglenookイングルヌック・ワイナリー に隣接する4エーカーの土地を購入し、Beaulieu Vineyardボーリュー・ヴィンヤードを設立します。
ワイナリーの名前は妻のFernandeが最初の物件を見た時に言った言葉がフランス語で「美しい場所」を意味する “quel beau lieu “であった事に由来します。
最初のヴィンテージは1904年でしたが、この頃は未だ商用としての生産ではありませんでした。
丁度この頃ボーリュー・ヴィンヤードでは1870年代からナパバレーのブドウ畑を荒らし続けたフィロキセラ対策として耐性のある様々なブドウの木を接ぎ木して供給する大規模な苗床ビジネスも確立していきました。
1916年には敷地内に新しいワイナリーが建設され、本格的に始動する準備が整いました。1920年~1933年に実施された禁酒法の時代に突入するとワインの販売が禁止されていた事から他のワイナリーは苦戦を強いられましたがボーリュー・ヴィンヤードは全国的にカトリック教会の聖餐式ワイン生産に関する契約を結んでいたので経営難には陥りませんでした。
Georges de Latourがフィロキセラの出現と禁酒法という米国ワイン業界にとって非常に困難な時代に起業家としての不屈の精神、ビジョン、創造性を最大限に発揮し、経済的に成功を収めたという事実は本当に驚くべき事でした。
伝説のワインメーカーAndre Tchelistcheffの参画
1938年になるとワインメーカーとしてナパバレーの歴史の中で最も影響力のある
Andre Tchelistcheff を迎え入れます。
Andre Tchelistcheffはロシアのモスクワで育ち、チェコスロバキアで農業技術を学び、その後フランスでパスツール研究所と国立農業研究所でワインの醸造学を学びました。
現在でもボーリュー・ヴィンヤードのテイスティング・ルームの隣の中庭の奥にはAndre Tchelistcheffの堂々たる像が立てられています。
Andre Tchelistcheffはナパバレーで最も影響力があり、尊敬され、ボーリュー・ヴィンヤードの進化に貢献した人物であった事が分かります。Andre Tchelistcheffの主な功績には次のようなものがあります。
ワイン業界に重要かつ長期的な貢献をした個人に、功労賞を授与するWine Spectator Distinguished Service Award 1986においてAndre Tchelistcheffが選ばれました。その他にはWine Industry Technical SymposiumのWine Man of the Year(1990年)、ワインスペクテーター誌の読者賞(2000年)、COPIAの生涯功労賞(2004年)、アメリカ料理協会のVintners Hall of Fame(2007年)等があります。
次のステージへと駆け上がるボーリュー・ヴィンヤード
1940年に創業者のGeorges de Latourが亡くなった為、妻のFernandeがボーリュー・ヴィンヤードを監督します。
Fernandeが亡くなった後は娘のMadame Helene de Pinsと夫のMarquis がボーリュー・ヴィンヤードを引き継ぎます。その後、1960年代初頭迄に年間10万ケース近くのワインを販売するまでに事業が拡大していきました。
1969年になるとMadame Helene de Pinsはボーリュー・ヴィンヤードを米国の大手食品・飲料会社Heublein Inc.に売却します。
これに失望したAndre Tchelistcheffは1973年にボーリュー・ヴィンヤードを退職します。1987年にはHeublein Inc.がGrand Metropolitanへボーリュー・ヴィンヤードを売却します。 1990年になるとAndre Tchelistcheffは89歳という高齢でボーリュー・ヴィンヤードに復帰し、チーフワインメーカーのJoel Aikenと共に更なる強化に取り組みましたが1994年にその生涯に幕を閉じます。
近年のボーリュー・ヴィンヤード
Heublein IncからRJR Nabisco,Inc、Grand Metropolitan、Diageo plcと所有権が移転していったボーリュー・ヴィンヤードは2016年になるとTreasury Wine Estatesの傘下になります。 Treasury Wine Estatesはオーストラリア・メルボルンに本社を置く世界最大級のワインの製造販売会社です。
ボーリュー・ヴィンヤードの他にPenfolds、Sterling Vineyards、Beringer Vineyards等の名だたるワイナリーを傘下に収めています。
更に新体制となったボーリュー・ヴィンヤードは2017年にTrevor Durling をワインメーカーに迎えます。ソノマ出身のTrevor Durlingはカリフォルニア大学デービス校を卒業後、いくつものワイナリーで修業を重ねていく際にBeaulieu Vineyard Georges de Latour Private Reserve Cabernet Sauvignonと出会い後の人生を変えたと言います。
ボーリュー・ヴィンヤードでは現在もTrevor Durling主導の下、最新のテクノロジーと昔ながらの伝統を組み合わせて、卓越したナパバレー・カベルネ・ソーヴィニョンを造り続けています。
ワインテイスティングレポート
B.V. Private Reserve Georges de Latour Cabernet Sauvignon 19822021年3月25日
ボーリュー・ヴィンヤード創設者の名前が付けられたフラッグシップワイン。伝説のワインメーカーAndre Tchelistcheffが手掛けたワインでもあります。
香りはカシスや干しプラムのような赤系果実と黒系果実の中間的な印象。スモーキーで枯れ葉や葉巻のニュアンスがハッキリと感じられる。味わいは甘みは控えめで酸味は非常にシッカリとしておりタンニンは熟成から溶け込んでいるものの若干、収斂性も感じ取れる。独特の強い枯れ葉や葉巻のニュアンスが特徴的でした。
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