アルコール度数14%未満で新樽比率を抑え、糖度が低く酸があるバランスの取れた最高のブルゴーニュスタイルのシャルドネとピノノワールを目指して設立され、瞬く間にカリフォルニア南部サンタバーバラ地区をプレミアム・ピノ・ノワールとシャルドネの産地として有名にしたJim Clendenen率いる超実力派ワイナリーAu Bon Climatオー・ボン・クリマの歴史と栄光の軌跡をご紹介します。
オー・ボン・クリマについて
1953年1月11日にオハイオ州アクロンで生まれた
Jim Clendenenはカリフォルニア大学サンタバーバラ校で法学を専攻していた時にボルドーやブルゴーニュへの海外旅行をきっかけにワインに興味を持つようになりました。1976年に大学を卒業すると自分へのご褒美としてブルゴーニュとシャンパーニュへ旅をします。
ワイン造りのプロセスに関するあらゆる事を貪欲に学んだ後、1978年の収穫から3年間サンタバーバラ郡のZaca Mesa Wineryでアシスタント・ワインメーカーを務めるとソノマ郡サンタローザで友人とQupe Vineyardsを設立します。
1981年にはブルゴーニュの実力派として名高いDomaine des Comte LafonとMaison Nicolas Potelで過ごし多大な影響を受け、翌年1982年にカリフォルニア州南部サンタバーバラ郡で友人のAdam Tolmach(1989年に脱退)と共にAu Bon Climatオー・ボン・クリマを設立します。
Au Bon Climatオー・ボン・クリマとはフランス語で「風通しの良いブドウ畑」を意味します。当初は冷涼なサンタマリアバレーと温暖なサンタイネズバレーの間にあるLos Alamos Vineyardの敷地内からスタートしました。
次のステップへ進むオー・ボン・クリマ
1989年になるとLos Alamos Vineyardの敷地から現在の本拠地であるBien Nacido Vineyardの敷地内へと移転し、オー・ボン・クリマがワイナリーとして本格的に始動します。
1995年に娘Isabelleの誕生を祝してAu Bon Climat Isabelle Pinot Noirをリリースします。これまで単一畑に拘っていたオー・ボン・クリマのワインの中で初めてのブレンドとなります。このIsabelleは6つの異なるブドウ園からの最高の樽をブレンドした究極のワインとなっています。
1998年になると息子Knoxに因んでAu Bon Climat Knox Alexander Pinot Noirをリリースします。このワインはLe Bon ClimatとBien Nacido Vineyardで収穫されたピノノワールの中でも最も優れたロットから造られるブレンドワインです。
2000年になると妻や子供たちと共有したいという情熱を込めたプロジェクトClendenen Family Vineyardsをリリースします。これは商業目的ではなく職人による少量生産のワインで、Jim Clendenenが有機農法で栽培しているLe Bon ClimatとRancho La Cuna Vineyardsで収穫されたシャルドネとピノノワールを中心にネッビオーロ、トカイ・フリウラーノ、ヴィオニエ、プティヴェルド、ソーヴィニヨン・ブラン、そしてシラーとヴィオニエのブレンドなどを取り扱っています。
Jim Clendenenがこのプロジェクトでイタリア品種を扱う背景にはイタリアの有力な造り手 Aldo Vajra、Josko Gravner、Paolo di Marchiに強く影響を受けたという経緯があります。Jim Clendenen率いるオー・ボン・クリマの勢いは止まりません。
所有・管理する畑一覧
オー・ボン・クリマではサンタマリアバレーの南端にあるLe Bon ClimatとLos Alamos VineyardにあるRancho La Cunaという2つの畑を自社所有しています。その他にも厳選された高品質なブドウを生み出す畑と提携しており20種類以上のオー・ボン・クリマワインをリリースしています。以下にオー・ボン・クリマが所有・管理する各畑の詳細をご紹介します。
Bien Nacido Vineyard
カリフォルニア州サンタバーバラ郡の北端に位置し、太平洋から20マイルほど内陸に入った高台に広がる900エーカーのこの畑は、海の影響を受けた朝霧や午後の涼しい風が吹く事から冷涼な気候を特徴とします。砂利と石灰質の粘土からなる土壌はユニークで人気の高い特徴を持つブドウを生み出し、オー・ボン・クリマのワインの主な原料となっています。
Le Bon Climat
1998年にBien Nacido Vineyardの向かい側に購入した100エーカーのこの自社所有畑にはピノノワール、シャルドネ、ヴィオニエ、ゲヴェルツトラミネール、アリゴテが植えられています。この畑はドリップ灌漑や土壌の排水を設置したり、厳選された植物の木を1エーカーあたり1,600本に制限したりするサスティナブル農法で管理されており、最良の生育条件を確保しています。
Rancho La Cuna
サンタマリアバレーとサンタイネズバレーの間に位置するLos Alamos Valleyにある10エーカーのこの自社所有畑にはシラー、ヴィオニエ、グルナッシュ、グルナッシュ・グリ、シュナン・ブラン、ピノノワールが植えられています。日中は暖かく、夜はとても寒いこの地域のブドウは驚くほどの凝縮感とバランスを実現します。また、Los Alamos Valleyは正式なアペラシオンではない為、ワインラベルには「サンタ・バーバラ・カウンティ」と表記されています。
Runway Vineyard
カリフォルニア州の元副知事 Abel Maldonado Jrと娘のErika Maldonadoは2008年にサンタマリアバレーにRunway Vineyard を設立し、1,000エーカーの区画に16エーカーのピノノワール、シャルドネ、ピノ・グリを植えました。Bien Nacido Vineyardsの隣に位置する事もありオー・ボン・クリマが介入するのも自然な流れでした。
Sanford & Benedict Vineyard
1971年にリチャード・サンフォードとマイケル・ベネディクトがカベルネ・ソーヴィニヨンとリースリング、後にピノノワールを植えた事が始まりのこの畑はサンタリタヒルズに位置し、海洋性の風が吹く非常に冷涼な気候で、ブルゴーニュ地方の伝統的な品種であるピノノワールとシャルドネの栽培に適しています。オー・ボン・クリマではピノノワールとシャルドネにとって完璧な土壌とも言えるこの畑から1980年代中頃以来ブドウを買い続けています。
Los Alamos Vineyard
この畑は北側の冷涼なサンタマリアバレーと南側の温暖なサンタイネズバレーの間に位置し、両方のアペラシオンの最良の特徴を持っています。 シャルドネはなだらかなソロモンヒルズの風にさらされた最上部の斜面で栽培されています。丘の斜面を下ったところにはピノノワールが栽培されており、凝縮感のある豊かな味わいのブドウを特徴とします。
Sierra Madre Vineyard
太平洋からわずか15マイルのところに位置する事から砂質の土壌には塩分と海の香りが含まれるという特徴を持ちます。非常に冷涼な栽培地域という事もあり長い時間をかけてゆっくりと熟す事で風味の強さを生み出すワインを造りだします。
Talley Vineyards
Talley家はサンルイスオビスポ郡南部に177エーカーの6つのブドウ畑を所有しています。中でもオー・ボン・クリマの供給源となるRincon Vineyard(49エーカーのシャルドネと33エーカーのピノノワール)とRosemary’s Vineyard(12エーカーのシャルドネと17エーカーのピノノワール)はいずれもArroyo Grande Valley AVAの冷涼な気候の影響を受けており品質の高さで定評があります。
リリースワイン一覧
オー・ボン・クリマのワインには4つのカテゴリーがあり、20種類以上のワインがリリースされています。
Blue Series
ブルーシリーズは最高のキュヴェから造られ、新樽の使用率が最も高いワインです。その名の通り青いボトルが特徴です。以下がオー・ボン・クリマ・Blue Seriesのワインとなります。この他にも限定ボトルでBlue Seriesとしてりりーすされるワインもあります。
Pinot Noir Knox Alexander
Pinot Noir Isabelle
Pinot Noir Larmes de Grappe
Chardonnay Nuits-Blanches Au Bouge
参照元:aubonclimat.com
Historic Vineyards Collection
サンタバーバラ郡とサンルイスオビスポ郡の5つの代表的なブドウ畑を集めたコレクションです。ゴールドのラベルが特徴となります。以下がオー・ボン・クリマ・Historic Vineyards Collectionのワインとなります。
Chardonnay Los Alamos Vineyard
Pinot Noir Los Alamos Vineyard
Chardonnay Bien Nacido Vineyard
Pinot Noir Bien Nacido Vineyard
Chardonnay Sanford & Benedict Vineyard
Pinot Noir Sanford & Benedict Vineyard
参照元:aubonclimat.com
Single Vineyard Wines
上記のワイン以外の単一畑シリーズがオー・ボン・クリマSingle Vineyard Winesとなります。
Chardonnay Runway Vineyard
Pinot Noir Runway Vineyard
Pinot Noir Kick-On Vineyard
Pinot Noir Lala Panzi Vineyard
等がありますが、今後も増えていく予定との事です。
参照元:aubonclimat.com
Santa Barbara County Classics
品質を落とさずにすぐに楽しめる非常に手頃な価格のワインです。
Pinot Noir Santa Barbara County
Chardonnay Santa Barbara County
参照元:aubonclimat.com
オー・ボ・クリマと創業者Jim Clendenenの主な功績
1989年と1990年にオー・ボン・クリマはワインアドヴォケイト誌でお馴染みの評論家ロバート・パーカー氏が選ぶ「世界のベストワイナリー」に選出されました。また、1991年には英国で最も有名なワイン評論家オズ・クラーク氏によって世界で50のモダン・クラシック・ワインを造る一人にJim Clendenenが選ばれました。
更にJim Clendenenは1992年にはロサンゼルス・タイムズ紙の「ロサンゼルス・タイム・ワインメーカー・オブ・ザ・イヤー」に、2001年にはフード&ワイン誌から「ワインメーカー・オブ・ザ・イヤー」に選ばれています。 2004年にはドイツの大手ワイン雑誌「Wein Gourmet」から「Winemaker of the World」に選ばれ、2007年には、ジェームズ・ビアード財団の「Who’s Who of Food and Beverage in America」に選出されました。
数多くの名誉ある賞を受賞してきたJim Clendenenでしたが2021年5月15日、カリフォルニア州ブエルトンの自宅で68歳という若さで亡くなりました。睡眠中に亡くなったという事でしたが死因は不明との事です。カリフォルニアのワインメーカーが風味豊かでアルコール度数の高いワインを造っていた時代に、アルコール度数を抑え、果実味のあるバランスの取れたブルゴーニュスタイルに拘ったJim Clendenenのワインポリシーは今後も引き継がれるでしょう。
2021年7月10日土曜日と翌11日の日曜日にサンタマリアバレーのオー・ボン・クリマのワイナリー施設に30年以上仕事を共にした友人でもあるBob Lindquistや妻のMorgan Clendenenを始め約500人の関係者が集まり5月15日に68歳で突然亡くなった伝説のワイン醸造家Jim Clendenenの人生を乾杯しました。
ワインテイスティングレポート
Blue Series
2021年7月29日
Au Bon Climat Pinot Noir Isabelle Morgan 2004
6つ以上の異なるブドウ畑からの最高の樽を厳選してブレンドされたオー・ボン・クリマの中でも最上級のワインです。
プラムやチェリーの香りとハーブのニュアンスが感じ取れる。スパイシーで土のようなニュアンスもある。甘みはまろやかで酸味は比較的シッカリとしてタンニンはやや強め。非常にバランスが取れた印象を受けました。
Au Bon Climat Pinot Noir Knox Alexander 2000
2つの自社所有畑Bien Nacido VineyardとLe Bon Climatで収穫された最高品質のブドウを厳選して造られます。
ラズベリーや熟したプラムの香りとバラの花びらやクローブのニュアンスが感じ取れる。ハーブやスパイシーな印象もある。味わいは甘みはまろやかで酸味は比較的シッカリとしており、タンニンはやや強め。バラの花びらやクローブのニュアンスが印象的でした。
Historic Vineyards Collection
2021年7月29日
Au Bon Climat Pinot Noir Mt.Carmel 2000
サンタリタヒルズにあるMt.Carmelの畑から購入したブドウで造られています。Mt.Carmelの畑で収穫されるブドウはその品質の高さゆえにIsabelleの供給源として使われる事もある程です。現在は生産されていません。
熟したプラムやブルーベリージャムのような凝縮感のある香りとスパイシーでスモーキーなニュアンスが取れる。土やモカ、クローブ、紅茶のニュアンスも取れる。味わいは甘みが豊かで酸味は比較的シッカリとしている。タンニンはやや強め。
Au Bon Climat Pinot Noir Sanford & Benedict Vineyard 2002
サンタバーバラ郡とサンルイスオビスポ郡の畑で収穫されたブドウから造られるHistoric Vineyards Collectionからサンタリタヒルズにある海風が吹く非常に冷涼な気候のSanford & Benedict Vineyardをご紹介します。この畑のテロワールはピノノワールとシャルドネの栽培に最も適した畑の1つと評価されています。
ブラックチェリーやブラックベリーの香りとオレンジの皮やハーブのニュアンスも感じ取れる。ややスパイシーで果実味が豊か。味わいは甘みはまろやかで酸味は比較的シッカリとしている。タンニンはピノノワールとは思えない程、強めで収斂性がある。酸味とオレンジの皮のニュアンスがとても印象的でした。
総評としてオー・ボン・クリマのワインは「酸味が比較的シッカリとして」「タンニンが強め」という共通点がある。個人的には単一畑がメインのオー・ボン・クリマが初のブレンドとしてリリースしたIsabelleの価値がイマイチ伝わってこない。一方で同じBlue SeriesのAu Bon Climat Pinot Noir Knox Alexander 2000はバラの花びらやクローブのニュアンスと酸味、タンニンのバランスからズバ抜けて好印象でした。
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