現在、アメリカのワイン生産量の約80%がカリフォルニア州で造られており、約12,300軒あるワイナリーの約40%(約4,800軒)がカリフォルニア州に存在します。
太平洋岸を流れるカリフォルニア海流の冷涼さと元来の温暖な気候が生む昼夜の寒暖差がワイン造りに適していると考えられ、ナパ、ソノマを中心に高品質ワインの産地として世界的に有名になりました。ここではもう少しカリフォルニアワインについて詳しく解説していきます。
歴史
アメリカでは1920年から1933年の間、禁酒法が施行されており、自家消費用のワインがメインでしたが、禁酒法が撤廃されてからはワイン産業が復興し、特にカリフォルニアワインの需要が飛躍的に増大していきました。
さらにその頃、カリフォルニア大学デイヴィス校では、アメリカの大学で初めてワイン醸造学科を設立し、その協力もあって高品質なワイン造りの風潮が高まりました。
1966年には、『カリフォルニアワインの父』と称されるロバート・モンダヴィがオークビルで高品質ワイン造りを目指してワイナリーを設立しました。
気候風土
カルフォルニア州の気候は太平洋を北から南に流れる寒流カリフォルニア海流の影響で沿岸部は冷涼です。海岸山脈とシェラネヴァダ山脈の間のエリアは非常に温暖ではありますが、太平洋上で発生した霧が内陸部へ流れ込み冷却効果を生むため、霧の影響大小でその土地の気候が多様に変化します。
また、夕方から急速に冷え込むため、非常に大きな昼夜の気温差が生まれ、これが良質なブドウ栽培に貢献し、結果としてカリフォルニア州はブドウ栽培・ワイン造りには好条件な気候風土と言えるのです。
主要ブドウ品種
[ 2017年カリフォルニア州主要ブドウ品種栽培面積 ]
出展:California Grape Acreage Report 2017(USDA National Agrlcutural Statistics Services)
白ブドウ | 2017(ha) |
Chardonnay シャルドネ | 37,819 |
French Colombard フレンチ・コロンバード | 7,651 |
Pinot Gris ピノ・グリ | 6,831 |
Sauvignon Blanc ソーヴィニヨン・ブラン | 6,010 |
Chenin Blanc シュナン・ブラン | 1,938 |
Muscat of Alexandria マスカット・アレキサンドリア | 1,870 |
White Riesling ホワイト・リースリング | 1,558 |
Muscat Blanc マスカット・ブラン | 1,214 |
Viognier ヴィオニエ | 1,097 |
その他の品種 | 5,592 |
合計 | 71,581 |
黒ブドウ | 2017(ha) |
Cabernet Sauvignon カベルネ・ソーヴィニヨン | 37,164 |
Pinot Noir ピノ・ノワール | 18,334 |
Zinfandel ジンファンデル | 17,487 |
Merlot メルロ | 16,101 |
Syrah シラー | 6,656 |
Rubired ルビーレッド | 4,690 |
Petite Si rah プティ・シラー | 4,641 |
Barbera バルペーラ | 1,979 |
Ruby Cabernet ルピー・カペルネ | 1,902 |
Grenache グルナッシュ | 1,786 |
Mal bee マルベック | 1,547 |
Cabernet Franc カベルネ・フラン | 1,423 |
Petit Verdot プティ・ヴェルド | 1,379 |
その他の品種 | 7,465 |
合計 | 122,555 |
白ブドウ+黒ブドウ合計 | 194,136 |
カリフォルニアで栽培されるブドウの主要品種は白ブドウがシャルドネ、フレンチコロンバード、ピノグリ、ソーヴィニヨンブランがあります。
黒ブドウではカベルネソーヴィニヨン、ピノノワール、ジンファンデル、メルロ、シラーとなっております。
ナパではカベルネソーヴィニヨンが、ソノマではシャルドネ、ピノノワールが主力品種となります。
※2017年カリフォルニア州主要ブドウ品種栽培面積の表を参照
アメリカのワイン法
アメリカのワイン法は1978年に制定され、アルコール・タバコ課税及び商業取引管理局(TTB = Alcohol and Tobacco Tax and Trade Bureau)が、各産地の規定及び表示、ブドウ品種、収獲年の記載等を管理しています。
また、ブドウ栽培において一定の地理的・気候的条件を満たすと判断された産地を規定したのがAVA(American Viticultural Areas)と呼ばれるもので、アメリカ全土で130以上も存在します。
ちなみに、州 → 群 → AVA → 畑の順番で細かくなっていき、適用される法律も異なります。
ワイン産地
カリフォルニア州のワイン産出エリアは大きく分けて5つに分類されます。
太平洋岸北部から「ノースコースト」「セントラルコースト」「サウスコースト」。内陸側北部から「シェラフットヒルズ」「セントラルヴァレー」。
その中でも特に高品質なワインを多く産出するナパ、ソノマを内包するのが「ノースコースト」です。
ナパ・カウンティ Napa County/ノースコースト
東、西、北側は山脈に囲まれており、南側がサンパブロ湾に向かって開けているため、ここから吹き込む冷たい海風が温暖な気候との温度差を生み、霧を発生させます。この霧がワイン造りに良い影響を与えると考えられています。現在、ワイナリーの数は約480軒存在します。ナパヴァレーの中でも南部のカーネロスは最も海からの影響を受けるので冷涼となっています。
北上するにつれて、海から吹き込む冷たい海風の影響が弱まるため温暖になる傾向にあります。
St.Helena(セントヘレナ)、Rutherford(ラザフォード)、Oakville(オークヴィル)、Stags Leap District(スタッグスリープディストリクト)といった中央部は比較的温暖で歴史的にも有名な「Opus One(オーパスワン)」や「Stag’s Leap(スタッグスリープ)」等のワイナリーが多く存在します。
西側のマヤカマス山脈、東側のヴァカ山脈のような山地の畑は標高の高い所にワイン畑がある傾向があります。このワイン畑は霧がかかる標高よりも高い位置にあるため、日照量と冷涼さを兼ね備えたテロワールにより独特の味わいを持つワインに仕上がる傾向があります。
このようにナパ1つとっても気候風土(テロワール)が異なるため、ワインの味わいも多種多様となります。
ソノマ・カウンティ Sonoma County/ノースコースト
ソノマは地図の通り18のエリアに分けることができます。ただし、カーネロスはナパとソノマの両方にまたがります。
ソノマもナパ同様、霧の影響を受けます。特に海岸線沿いのソノマコーストでは標高の高い場所でブドウ栽培が行われ、霧がかかる場所よりも高い位置に畑が多く存在することから海岸線沿いの冷涼な気候でありながら豊富な日照量を確保し、エレガントで高品質なワインが生まれます。
また、内陸側のナパよりも、海岸部のソノマの方が全般的に冷涼な気候となるため、温暖なナパがカベルネソーヴィニヨン主体である一方、ソノマではカリフォルニアの強い日差しと海岸部ならではの冷涼さから高品質なシャルドネやピノノワールが造られ、世界的に注目を集めています。