ワイナリー 2019.11.21
2021.04.30
林 亨(はやし りょう)
Flowers Vineyards & Winery
標高400メートルの霧の上に位置する、ソノマのグラン・クリュ畑「キャンプ・ミーティング・リッジCamp Meeting Ridge」を自社畑として保有する、フラワーズFlowers Vineyard & Wineryの歴史と魅力 をご紹介します。
業界的に影響力のあるアメリカのワイン評論家マット・クレイマーMatt Kramer曰はく、「フラワーズはブルゴーニュのグラン・クリュのような品質に近づいている、数少ないアメリカ産ワインの1つである 」と書き記しているほどです。それほど高い評価を得るフラワーズの魅力を徹底解説!
フラワーズについて
アメリカ・ペンシルベニア州のバックス郡で苗木商を営んでいたフラワーズ夫妻(ウォルト&ジョアン)は、視察と仕入れの目的でオレゴンやナパ、ソノマへ度々出向いていたところ、ブルゴーニュのピノノワールに興味を持ち出し、後に「カリフォルニアのロマネコンティ」と崇められた、
カレラ社のジェンセンとセレックに感銘を受けました 。それを機にワイン造りのための土地を探す事を決意します。
1989年、ワインスペクテーター誌に掲載された、ブドウ園に活用できる可能性がある321エーカーの土地売買の広告を見て大規模な調査を実施した後、購入。
※この辺りの区画は2012年にソノマで最も太平洋岸沿いにあるAVA「フォート・ロス・シー・ビューAVA(Fort Ross Seaview)」として認定 されます。
そこは、太平洋沿岸から僅か3~4kmにある海風の影響を強く受ける非常に冷涼な土地で、霧の影響下では日照量が足らず、ブドウの成熟には不十分と判断したため、霧の上の標高約400メートルの地で日照量を確保するという戦略を打ち立てました。
そうする事で豊富な日照量と海風による冷涼さを併せ持つ、寒暖差の大きいテロワールでのワイン造りが可能になると考えたからです。
1991年、この地にブドウを植え始めます。これに目を付けたのが、かのKistler Vineyards でお馴染みのスティーブ・キスラー でした。キャンプ・ミーティング・リッジの土地は多少の赤土は見られるものの、ミネラルを豊富に含む砕けた岩がメインの土壌であったため、かのスティーブ・キスラーはこれを見て、「私はブルゴーニュにいる 」と言ったそうです。
この畑から収穫されるブドウは暫くの間、Kistler Vineyardsにブレンド用のブドウとして供給されていましたが、あまりの品質の高さに感銘を受けたスティーブ・キスラーは、単一畑シリーズKistler Camp Meeting Ridgeとしてリリース したのです。
その後、1994年にフラワーズとしてもファーストヴィンテージをリリース。
1994年、1995年、1996年ヴィンテージはロシアンリバーヴァレーにあるキスラーの醸造所で、スティーブ・キスラー氏によって造られました。
後にこの土地から造られたワインは、スティーブ・キスラーからの評価も後押しして、フラワーズのフラッグシップ「フラワーズ・キャンプ・ミーティング・リッジFlowers Camp Meeting Ridge」という名の高品質でエレガントなソノマ産ワイン として、世界中に知れ渡る事になります。
そして、1997年にキャンプ・ミーティング・リッジよりも更に100メートル近く標高が高い場所に畑を取得。
翌1998年にはピノノワールを植え始め、2001年にはファーストヴィンテージをリリース。
これがフラワーズ2つ目の自社畑エステート「シー・ヴュー・リッジ・ヴィンヤードSea View Ridge Vineyard 」です。
フラワーズが誇る自社畑エステートワイン
自社畑エステートワインとは、フラワーズ自社の畑から収穫されたブドウのみで造られたワインで、現在、以下の3つがあります。
その他のワインは、自社畑と他社契約畑のブレンドで造られたワインになります。
FLOWERS CAMP MEETING RIDGEフラワーズ・キャンプ・ミーティング・リッジ
19世紀初頭、ロシアの毛皮商人がこの山頂にやって来て、内陸から避暑目的で集まった地元のカシャヤ・インディアンと取引をした事が地名の由来となっています。
1991年にスタートしたこの畑は、標高は1,150フィートから1,450フィートで、ピノノワールとシャルドネが植えられています。岩だらけの土壌と海風の影響を強く受ける立地が、ミネラル豊かで酸味を持つエレガントなワイン を造り上げます。
FLOWERS SEA VIEW RIDGEフラワーズ・シー・ビュー・リッジ
キャンプ・ミーティング・リッジよりも約100メートルも標高が高く、海岸線をはじめ緑の谷、周囲の山々と遮るものがない景色を眺める事が出来ます。
1998年にスタートしたこの畑は、標高は1,400フィートから1,800フィートで、ピノノワールとシャルドネに加え、ピノムニエが植えられています。
若い火山灰土壌と高い標高から得られる豊富な日照量が、口当たりが柔らかく丸みを帯びたワイン を造り上げます。
FLOWERS MOON SELECTフラワーズ・ムーン・セレクト
ペンシルベニア州に本拠地を置くフラワーズの苗床は、Moon Nurseryという名前であった事にちなんで名付けらました。
ムーン・セレクトはキャンプ・ミーティング・リッジの中から厳選したブドウで、不定期(1996年がファーストヴィンテージ)に造られる幻のワイン ですが、公開されている情報が非常に限定的なため詳細は不明です。
フラワーズの現在
昨今では、遠隔地にあるフラワーズのワイナリーに足を運ぶのが困難な人のために、ヒールズバーグのダウンタウンから僅か数分のところにホスピタリティセンターを建設した事で、多くの観光客が訪れるようになったようです。
そこは、たくさんの花々に囲まれた癒しの空間になっており、フラワーズの新名所になっています。ホスピタリティセンター内の各所には自然に触れあいながらテイスティングできる場所が確保されています。
また、Jamil Pedenという名のワイナリーシェフが常駐しており、シャルドネとピノノワール各2種類に対して最適なペアリングの料理も楽しめるようです。
高品質なフラワーズのワインは、Wine & Spirits Magazine’s Top of The Listで頻繁に取り上げられています。また、Wine Spectatorでは“An American Grand Cru Burgundy… ”と表現されており、今でも高い評価を受け続けています。
テイスティングレポート
Flowers Camp Meeting Ridge Pinot Noir 1997 vs Flowers Camp Meeting Ridge Moon Select Pinot Noir 1997 2019年11月14日
同じヴィンテージで同じキャンプ・ミーティング・リッジから収穫されたブドウですが、特に出来の良いロットで構成されているのがムーン・セレクトです。
キャンプ・ミーティング・リッジの方は、熟成によりタバコのニュアンスが感じられ、果実味が豊かでしっかり酸が乗っている。
一方、ムーン・セレクトの方は、タバコのニュアンスは弱く、熟成感、果実味、酸味のバランスが取れた優等生といった印象。個人的には前者の方が好みでした。酸の乗り方から推察するに、まだ数年は熟成に耐え得る だろうと思われます。
いずれにせよ、このレベルのエレガントなワインを造るフラワーズは、ブルゴーニュのグラン・クリュクラスに匹敵する と言って良いでしょう。見事でした!
Flowers Moon Select Chardonnay 2008
樽熟成によるヘーゼルナッツやバターのニュアンスが強いが、僅かな苦味と上品な酸味がテロワールを反映しており、結果としてエレガントな出来となっている。
こちらもブルゴーニュのグラン・クリュクラスに匹敵する と言っても良いでしょう。素晴らしい!
フラワーズ・ピノ・ノワール・キャンプ・ミーティング・リッジの購入はこちら
フラワーズ・ピノ・ノワール・シー ヴュー・リッジの購入はこちら
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